【1月21日 AFP】南極海での日本の調査捕鯨船に対する米環境保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd Conservation Society)」の一連の妨害活動は、反捕鯨活動の熱意もさることながら、日本にとっては感情面に訴える問題でもある。南極海と日本沿岸の太平洋で毎年1000頭以上を捕獲している日本の捕鯨の歴史と現状を以下にまとめる。

■文化と歴史

 日本の捕鯨は、欧米諸国との複雑な関係の上に成り立っている。

 日本は江戸時代末期の1854年、200年以上続いた鎖国を解いたが、これをせまったのは日本近海で操業する米国をはじめとする欧米各国の捕鯨船だった。

 第2次世界大戦で日本が敗戦後、占領米軍は飢餓状態の日本を救うため南極海での捕鯨を奨励。そのため、日本の高齢世代にとっては、鯨肉はいまだに日本の急速な戦後復興を思い起こさせる「特別なもの」だ。

 しかし、今や日本の捕鯨は欧米諸国との最も激しいあつれきの1つに。日本は、欧米の反捕鯨団体を「文化帝国主義」と非難している。

■政治

 欧米諸国が反捕鯨へと方針転換する中、日本政府は1986年、国際捕鯨委員会(IWC)が採択した商業捕鯨モラトリアム(一時停止)決議に従うことで合意したが、「科学的調査」として捕鯨活動を再開。一方、ノルウェーとアイスランドはモラトリアムの受け入れを拒否している。

 日本は商業捕鯨の本格再開を目指して主な経済援助先の発展途上国に対しIWCへの加盟を働きかけているが、それらの国々が捕鯨とは縁がないこともあり、環境保護団体は「買票行為」と日本政府を非難している。

■料理

 日本政府は、鯨肉の供給量が需要を上回っていることは認めている。鯨肉が一般飲食店で見られるのはまれで、鯨肉を一度も食べたことがないという若者も多い。

 政府は、学校給食や「鯨肉バーガー」などの新メニューを通じて鯨肉の普及活動に取り組んでいる。

■経済

 日本政府は、(南極海における)捕鯨は調査目的との立場を掲げる。南極海での調査捕鯨は従業員数283人の共同船舶(Kyodo Senpaku Kaisha)に委託されている。

■科学

 日本側は、調査捕鯨の目的を「クジラの数を記録し、クジラが漁業資源をどの程度消費しているのかを知るため」としているが、環境保護団体側は「クジラを殺さなくても調査は可能」としている。(c)AFP