【1月10日 AFP】原油価格の高騰が環境に与える影響について、専門家は光と影の両面を指摘する。

 原油価格は年明け早々、中国での需要増やナイジェリアの供給不安などを背景に一時1バレル100ドルの大台を突破した。2001年11月の原油相場はわずか1バレル16.70ドル。1年前は1バレル50ドルだった。

 消費者にとっては頭の痛い問題だが、環境にとっては恩恵もあるようだ。

■クリーンエネルギーへの転換など歓迎すべき側面も

 原油価格の高騰により、燃費の良い車や公共交通へのシフトが促進される。さらに、かつてはコストが高すぎる上に亜流とみなされていた風力発電、太陽光発電などの「代替」エネルギーにも追い風となる。

 世界風力エネルギー協会(Global Wind Energy CouncilGWEC)の2007年の暫定統計によると、風力発電能力の合計は世界全体で92-93ギガワットと、前年の74ギガワットから25%も増加した。

 リサイクル業界、特に原油や天然ガスを原料とするプラスチックのリサイクル業界も原油高騰を歓迎している。原料費が上がれば上がるほど、ペットボトルや買い物袋などのリサイクル熱が高まるからだ。

 European Association of Plastics Recycling and Recovery OrganisationsEPRO)によると、ここ10年であらゆる種類のプラスチックの価格が倍に跳ね上がったという。けん引役は年間1000万トンの廃プラスチックを扱う中国で、うち半分は欧米などの豊かな国々から輸入している。

 原油価格が最高値を更新し、中国は廃プラスチックの輸入元を選別しやすくなった。欧州のリサイクル企業は工場をよりハイテク化し、国内向けのリサイクルを行うようになっている。

■CO2排出量の多い化石燃料利用でマイナス面も

 原油価格の高騰により、クリーンな再生可能エネルギーへの転換や資源リサイクルに弾みがつく一方で、地球温暖化の大きな原因となる石炭や粗悪な石油、安全面での懸念がぬぐいきれない原子力発電への依存も進んでいる。

 GWEC幹部のスティーブン・ソーヤー(Steven Sawyer)氏は「粗悪な石油やガソリンの開発プロジェクトは経済的に魅力がある」と指摘し、カナダを中心とするタールサンドへの投資熱を例に挙げる。

 この事業は「単位当たりのエネルギー供給量からいうと、想像しうる中で最も深刻な公害をもたらし、温室効果ガス排出量の最も多い事業」だという。タールサンドは砂、水、重質原油の混合物で、原油抽出が難しくコストもかかるが、ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)などの大手企業は多額の資金を投じ、1バレル約40ドルで原油を生産して高収益を上げている。

 さらに環境への脅威となるのは石炭だ。国際エネルギー機関(International Energy AgencyIEA)によると、石炭による発電は世界のエネルギー生産の約4割を占める。中国、米国、インドなどの経済大国は、原油のように地政学的なリスクがなく安価な自国の石炭をどん欲に採掘している。IEAによると、中国は2006年、石炭を燃料とする火力発電所を週3施設建設した計算になるという。

■問題よそに原発依存も進む

 安全性、高放射性廃棄物の貯蔵、核拡散などに対する懸念をよそに、原油高と気候変動対策の両方から原子力発電には有利な状況が生まれている。IEAによると現在、世界のエネルギー生産の15%が原子力発電によるもの。中国、インド、タイ、インドネシア、ベトナムは原子力発電の導入・拡大政策を掲げ、英国、フランス、フィンランドは次世代原子炉の建設を推進している。さらに米国も原子力発電所の建設を加速する法律を通過させた。

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は2007年9月、途上国が「安全でコスト面の効率が良く、核拡散防止にも寄与する原子力発電所」を得られるよう先進国は支援すべきとの考えを表明。「原子力発電は大気汚染も温室効果ガス排出もなく電力を大量生産できる現存する唯一の手段だ」と述べている。(c)AFP/Marlowe Hood

<ニュース解説画像一覧へ>