【12月27日 AFP】将来、気候変動史の歴史書が書かれるなら、2007年は1章分を占めるほどの価値があるだろう。

 わずか12か月で地球温暖化問題は現代の一大課題に浮上し、知名度の大小を問わず人類共通の大義となった。ノーベル賞の授賞理由になったかと思えば、あらゆる政治家の頭痛の種にもなった。

■IPCC報告書、最悪の将来を予測

 国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)が11月に発表した報告書では、科学的知見に基づくかつてない最悪の将来予測が示された。

 飾り気のない事務的な文面で綴られた報告書は、門外漢には理解不能な専門用語だらけだが、疑問や不確実性のある部分が存在することも率直に認めている。しかしその率直さが、発見された事実を一層恐ろしいものに思わせた。

 IPCCは人類に有罪を宣告。「地球温暖化は事実であり、野放図に化石燃料を消費する人類には免れ得ない責任がある」と結論付けた。

■気象異常など気候変動が顕在化

 気候変動は既に顕在化している。氷河は後退、積雪は減り、ほんの数十年先には数百万人が苦難に見舞われるという。IPCCは干ばつ、洪水、海面上昇、猛烈な暴風雨など最近の気象異常により、飢餓、疫病、難民が発生すると予測する。「人間活動により、回復不能な気候変動がもたらされる恐れがある」(同報告書)

 北極海の海氷は観測史上最小となり、有史以来航行不能だった欧州とアジアをつなぐ最短航路、北西航路が一時開通した。

■画期的な出来事続く

 6月にドイツのハイリゲンダム(Heiligendamm)で開かれた主要国首脳会議(G8 Summit)では、二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減し2050年までに半減するという欧州の目標をジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領までもが真剣に検討する姿勢を示した。

 9月にニューヨーク(New York)の国連本部で開かれた地球温暖化に関するハイレベル会合では、潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長が気候変動を自身の在任中の重要課題に据えると宣言。「地球温暖化とそれに対する取り組みによって、われわれ自身とわれわれの時代、さらにはわれわれが将来世代に残す遺産が定義されるだろう」と述べた。

 11月には、アル・ゴア(Al Gore)元米副大統領とIPCCに2007年ノーベル平和賞が授与された。

■バリ・ロードマップ採択も、協議はこれから

 12月にはインドネシアのバリ(Bali)島で国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第13回締約国会議(COP13)が開かれ、地球温暖化対策のための行程表「バリ・ロードマップ(Bali Roadmap)」が採択された。

 バリ会議では各国が気候変動の危険性を認め、化石燃料による大気汚染の削減やクリーンエネルギーへの転換、途上国支援の必要性を唱えながらも、数兆ドル規模の費用負担については合意が得られなかった。

 安価な石油、天然ガス、石炭を大量消費して繁栄を手にし、今日の温暖化の責めを負う先進国が負担すべきなのか。それとも、今後より大きな問題を引き起こす恐れのある中国、インドなどの新興大国が負担すべきなのか。バリ会議は実質的に、交渉を開始するための交渉だった。

 地球の気候システムの時計の針が刻一刻と進んでいくのをよそに、向こう2年間は非常に複雑な条約の議論に費やされる。しかも、次期米大統領が京都議定書のような排出抑制に反対すれば、日の目を見ない恐れさえある。

 普通の人なら、放火犯が町に火を放ったにもかかわらず、地元自治体が長期的な消防計画を2年間かけて議論すると聞いたら、なぜかと不思議に思うだろう。

■問われる国連の役割

 ドイツのポツダム気候影響研究所(Potsdam Institute for Climate Research)のBill Hare氏は「(気候変動問題については)必死に水面に顔を出している状況だ。行動の必要性と政治的な美辞麗句との開きは大きくなりつつある」と指摘する。

 Hare氏は、地球規模の気候管理に国民国家の単位で取り組むことが根本的な問題だと語る。言い換えれば、合意を必要とするために動きの遅い国連機構が、地球規模の緊急課題に取り組むことができなければ、国連には未来がないかもしれないのだ。

「国連は機構が抱える問題点を提起するかもしれないが、気候変動問題の解決と並行して機構問題の解決に取り組む時間はない。今あるものしかないのだから、それで取り組むしかない」(Hare氏)(c)AFP/Richard Ingham