【11月13日 AFP】(写真追加)インドの首都ニューデリー(New Delhi)で10日夜、サルの群れが住民を襲い、女性1人が重傷、数十人が応急手当を受けた。前月末、同市のS・S・バジワ(S.S. Bajwa)副市長(52)が、サルの群れを追い払おうとして、自宅のテラスから転落死する事件が起きたばかりだった。住民の間では、サルの凶暴な行為に新たな不安が広がっている。

 Jaspal Singh警察本部長補佐は、AFPの取材に対し「3、4匹のサルが事件を起こした」と説明し、「野生生物保護団体の職員が犯人のサルを捜索中だ。警察はサルの専門家ではない。暴れるウシならまだしもサルは手ごわい」と話した。

 住民の話では、サルは夜遅くに現れ、Shastri Park で長時間暴れ回ったという。地元紙タイムズ・オブ・インディア(Times of India)によると、被害者のNaseemaさんは「午後11時ごろ、自宅の玄関先で人と話していたところサルが現れ、中に入った途端子どもの足にかみついてきた」と話したという。

 ニューデリーでは神聖視されているウシや水牛約35000頭が自由に歩き回る姿が見られるが、人を襲うサルも長年悩みの種となっていた。サルはニューデリーに1-2万匹生息しているとみられ、日常的に政府関係の建物、裁判所、警察署、病院を走り抜け、近隣にも脅威を与えている。

 サル被害問題が大きく発展したのは、前月末に起きたS・S・バジワ副市長の転落死だった。遺族によると、副市長はテラスで新聞を読んでいたところに4匹のサルが現れたため、棒を使って追い払おうとしたがテラスから転落した。

 2001年、地域住民は「サルのいない街」を求めて市の裁判所に請願書を提出した。国会議員らも今年5月、サルからの保護を訴えたが、進展はほとんどみられていない。市の関係者は「サルの捕獲を試みているが、人員が不足しており、全力を尽くして捕獲することができない」と話す。

 ニューデリー市は、サルの捕獲に25万3000ドル(約2780万円)の予算を計上し、現在使われていない鉱山地域にある保護施設に移そうと計画中だ。一方、隣接する州は、州内の森に捕獲したサルを放すことを拒否している。

 ヒンズー教徒が、サルをハヌマーン神の生き神と考える見方も問題を複雑にしている。ニューデリーのAarti Mehra市長は、サルを捕獲しても「動物保護活動家や宗教的な理由で市民からサルを解放するよう圧力をかけられる」という。

 インドの動物保護団体Wildlife SOSKartick Satyanarayanan代表は、人口が急激に増加し、サルの自然の生息地をおびやかしたことが問題の根底にあると指摘している。(c)AFP