【9月29日 AFP】地球温暖化を阻止する方法として、英国の著名な研究者2人が、海底100~200メートルに最高数百万本にも及ぶ巨大な鉄パイプを垂直に設置することを26日、提言した。地球温暖化を阻止する働きを持つ海の藻類の繁殖を促すことができるという。

 ジェームズ・ラブロック(James Lovelock)氏とクリス・ラプレイ(Chris Rapley)氏は英科学誌「ネイチャー(Nature)」への寄稿文の中で、「地球温暖化という病理には根本的な治療が必要」と指摘し、「地球自身が持つ自己回復能力を刺激することが緊急治療法として効果的」だと主張する。

■地球のバランスが崩れている

 大気の温度が上昇するにつれ、これまで気候を制御してきた地球の循環プロセスが、気温上昇を加速させる方向に変化しつつあると2人は説明する。

 北極海の氷が毎年減少するにつれ、熱を反射し大気に押し戻す役割を果たす雪や氷が減り、熱を吸収する働きを持つ海面に、より多くの太陽光線が当たるようになることは、その一例だという。

 気候変動により地球のバランスはすでに一定の限界点を超えてしまい、複数の循環プロセスの混乱が、スパイラル的に気温を上昇させるようになっていると主張する2人は、その解決方法として地球の表面の70%を覆う海洋に着目する。

 北極海の氷と同様、白い雲も太陽熱をはね返す働きがあり、海洋気候に大きな影響を与えるが、雲は水蒸気から自動的に生成されるものではなく、硫化ジメチルのような凝縮核と呼ばれる化学要素を必要とする。

■パイプ設置で海に栄養補給

 海水が一方通行するフラップ(ふた)をつけた直径約10メートルのパイプを、一定範囲で自由に移動できるよう鎖でつなぎ止めて海底に垂直に設置すると、海底近くの栄養分の豊富な海水と、海面直下の温度が高くて不毛な海水が混じり合うようになるという。

「海面近くの海水は藻類、栄養分が不在の、いわば海洋の砂漠部分になっている。地球温暖化の主要因である二酸化炭素を吸収し、空の雲の生成を媒介する硫化ジメチルを排出する能力を持つ藻類の成長力を回復させる方法はないかと考えた」とラブロック氏はいう。

「この方法を通じて、地球温暖化を阻止するために行動することの価値を示したい。地球は本来、自己制御能力を持っているのに、現在はそれが機能しない状態に陥っている。炭素隔離の技術や、炭素排出抑制に対する国際的努力だけでは、地球の原状回復さえも十分にできない」とラブロック氏は警告する。(c)AFP/Marlowe Hood