【7月31日 AFP】北京五輪開幕まで1年を切ろうとしているが、北京の空に漂う重い煙霧は、その成功に暗い影を投げかける。

 国際五輪委員会(International Olympic CommitteeIOC)は、大気汚染がオリンピック成功の一番の障害になりうると繰り返し警告を発し、北京市当局も大会期間中の青空を確保するため必死になっている。

 政府は来週からの2週間、北京市内から100万台の車を排除するという計画を実行する。

 五輪開催の2008年には、市内の建設工事も制限され、空気洗浄のために人口雨を降らせ、公害を引き起こしている大規模な工業活動の多くは一時的に市外に移る。

 しかし、五輪開幕のちょうど1年前となる8月8日に開催されるカウントダウン・イベントを前に、煙霧はいまも北京の空を覆い続け、問題の深刻さは明白。

 2008年の大会期間中も大気汚染を避けるのは難しいと語るのは、ロードアイランド大学(University of Rhode Island)で大気汚染問題を専門とするKenneth Rahn教授。

 「市内の経済活動を制限することは多少の効果はあると思うが、それで十分かどうかはわからない」

 1日1200台のペースで増加する車は、北京の公害の主原因とされてきた。しかし、Rahn教授を含め多くの関係者からは、車を排除するだけでは解決策にならないという声が出ている。

 北京の経済モデルをまねている周辺都市が、北京の空に煙霧をもたらしている可能性もあるからだ。

 「北京の大気汚染の半分は、北京市以外に原因があるという考え方には、有力な証拠がある」とRahn教授。

 フランスの気候環境科学研究所(Climate and Environment Sciences LaboratoryLSCE)のHelen Cachier研究員は、「夏の間、北京の南東に広がる工業地帯から排出される汚染物質を含む大気が北京まで風で運ばれ、北京周囲の山岳地帯が壁となりそのまま上空に留まるというパターンがある」と指摘する。

 この現象は地球温暖化が進めばさらに悪化する。台湾海峡で低気圧が発達する回数が多くなり、汚染された空気をさらに北京にもたらすことになるというのだ。

 北京市だけでどれだけ対策が取られようと、周辺都市が五輪に向け心を1つにし汚染の元となる工場などを閉鎖しないかぎり効果はあまり期待できない、とRahn教授は指摘する。(c)AFP