【7月30日 AFP】近年、エネルギー危機が深刻化するアフリカ各国では、安価なバイオ燃料の生産に向けた計画に熱心に取り組み始めているが、目立った成果を挙げている国はほとんどない。

■バイオ燃料の生産に意欲

 バイオ燃料の熱心な推進者のひとりであるセネガルのアブドゥラエ・ワッド(Abdoulaye Wade)大統領は、世界でも代表的なバイオエタノール供給国である外遊先のブラジルで、バイオ燃料が「アフリカに新しい革命」を起こそうとしていると述べた。また、アフリカ大陸は「バイオ燃料の巨大な生産地となる」と誇らしげに語った。

 高騰を続ける原油価格に苦しみ、また貧困レベルや疫病対策が一向に改善しない中で、アフリカ諸国はバイオ燃料が経済の見通しを明るくすることに期待をかける。さらに、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減に貢献するとの声もある。

 バイオ燃料の生産実験はアフリカの多くの国で実施されているものの、施設への投資が進んでいる国は少ない。

■南アは工場を操業予定

 アフリカ大陸で最も開発の進んでいる南アフリカのターボ・ムベキ(Thabo Mbeki)大統領は、バイオ燃料の研究・生産を早急に進めるよう呼びかけた。

 南アフリカは、2006年7月、アフリカで最初のバイオエタノール生産工場の建設に着手。原料である穀物の糖分を発酵させ、エタノールを抽出する工程で、2007年末までに生産を開始することになっている。同国では、同様の施設をさらに7つ建設し、2010年までに操業を開始する見込みだ。

■ディーゼルに依存するセネガル、バイオ燃料生産に期待

 一方、セネガルはバイオディーゼル生産に向けた菜種栽培の実験を開始した。また、国内の製糖企業1社がバイオエタノール抽出のための蒸留を行っている。

 セネガルでは自国の取り組みの真剣さを示すべく、ワッド大統領がバイオ燃料と再生可能エネルギーに関する政策に特化した省を新設した。同国は石油を産出せず、発電の大半をディーゼルに依存していることから、バイオ燃料の生産開始を強く望んでいる。

■大量生産は不可能か

 一方、仏語系の西アフリカ諸国8か国による西アフリカ経済通貨同盟(West African Economic and Monetary UnionUEMOA)は先日発表した報告書の中で、アフリカのエネルギー問題にとってバイオエネルギー生産は「解決策ではない」との警告を発した。

 UEMOAは、バイオ燃料は従来の原油に取って代わることはできず、単に石油を補完するにとどまるとの見解を示し、「バイオ燃料では大量生産として必要な生産量に達するのは不可能」と述べている。

 国連(UN)食糧農業機関(Food and Agriculture OrganizationFAO)も批判的で、バイオ燃料の生産拡大により、アフリカがすでに直面している食糧不足に拍車をかける事態に陥りかねないとして、危機感を示している。(c)AFP/Francois Tillinac