【5月10日 AFP】世界的なヘアスタイリストのヴィダル・サスーン(Vidal Sassoon)氏が9日、白血病のため米ロサンゼルス(Los Angeles)の自宅で死去した。84歳。

 地元警察と家族の発表によれば、サスーン氏は同日朝、高級住宅地ベル・エア(Bel Air)のマルホランド・ドライブ(Mulholland Drive)にある自宅で家族らに見守られて息を引き取ったという。

■ボブカットの先駆者、手軽さで人気博す

 ヘアスタイリングの創始者とも称されたサスーン氏は、ボブカットの生みの親と言われる。それまで主流だったパーマヘアと異なりシャンプーとブローだけで簡単にスタイリングできる「ウォッシュ・アンド・ウェア」が人気を得て、ロンドンに開いた美容室から世界的なヘアサロン・チェーンを築き上げた。

 ヴィダル・サスーンブランドのヘアケア製品販売でも成功。1980年に米国で使われた宣伝コピー「If you don't look good, we don't look good(あなたが美しくなければ、私たちも美しくなれない)」は長く親しまれた。

 映画情報サイト「インターネット・ムービー・データベース(IMDb)」によると、ロンドンでイスラエル人の両親のもとに生まれたサスーン氏は、父親が家庭を捨てて他の女性のもとに走ったため、7年間を児童擁護施設で過ごした。第二次世界大戦(World War II)中は田舎に疎開。1948年の第一次中東戦争ではイスラエル軍に従軍し、後には「ヴィダル・サスーン反ユダヤ主義国際研究所(Vidal Sassoon International Center for the Study of Anti-SemitismSICSA)」を設立している。

 1954年、ロンドンに美容サロン1号店を開く。60年代にミア・ファロー(Mia Farrow)主演の映画『ローズマリーの赤ちゃん(Rosemary's Baby)』(1968年)や、グレンダ・ジャクソン(Glenda Jackson)がアカデミー主演女優賞を受賞した『恋する女たち(Women in Love)』(1969年)などでヘアスタイルを手がけ、才能を開花させた。2009年の英国女王誕生日には、ヘアスタイルを通じた慈善活動で大英帝国勲章(CBE)を授与されている。

 2010年には、ロンドン・イーストエンド(East End)の貧しい地域に生まれ児童擁護施設で育ったサスーン氏が、美容師として成功し、セレブのヘアスタイルを手がけ名声を得るまでの人生を描いたドキュメンタリー映画『ヴィダル・サスーン(Vidal Sassoon: The Movie)』が制作された。

 4度の結婚歴があり、3人の子どもがいる。(c)AFP

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