【9月22日 AFP】衣服を脱ぎ去る姿や肉感的な唇で50年代に旋風を巻き起こしたブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)とソフィア・ローレン(Sophia Loren)が今月、75歳を迎える。しかしこの年になっても、セックスシンボルとしてのイメージは健在のようだ。

 不機嫌そうな表情が特徴的なブロンドのバルドーと黒髪で艶めかしいローレンは、性の解放が起こった60~70年代、美と才能を持ち合わせたアイコンとして有名になり、戦後の復興途中だった欧州に衝撃を与えた。しかし、その後の2人は全く別の道を歩いている。

 3年前、当時72歳だったローレンは、 ペネロペ・クルス(Penelope Cru)など若い女性たちとともにピレリ(Pirelli)カレンダーのモデルになり、白いベッドの上でセミヌードを披露した。今でも胸元の大きく開いた衣装を着るグラマーなローレンは当時、ゾクゾクする体験だったと語った。「こんな依頼が来るなんて思わなかった。でも、仕方ない、とにかくやろうと思った」

 一方のバルドーは最初の夫ロジェ・ヴァディム(Roger Vadim)の作品『素直な悪女(And God Created Woman)』への出演で一躍スターダムに駆け上がったが、この作品で演じたような「小悪魔」のイメージはその後脱ぎ捨て、動物愛護運動に熱心に取り組むようになった。闘牛や狩猟、そして動物に対するあらゆる虐待に立ち向かいながらも、そうした活動以外ではめったに公の場に姿を見せることはない。

 72歳の誕生日、自身が設立した基金の20周年を祝うためパリ(Paris)を訪れたとき、年齢による衰えは隠しようがなく、関節炎の痛みを抑えるため松葉杖を使って歩いていた。

 バルドーはつい昨年にも注目を集めたことがある。米国の共和党副大統領候補(当時)のサラ・ペイリン(Sarah Palin)氏が自分を「口紅を付けたピットブル(闘犬)だ」と表現したことを批判。ペイリン氏を「女性の恥」だとし、「あなたほど危険なピットブルはいない」という公開書簡を送った。

■裕福な家庭で育ったバルドー

 1934年9月28日、パリの裕福な家庭に生まれたバルドーは、家族に関係者がいたことから、わずか十代で「エル(Elle)」誌のモデルになり、18歳で後の夫となるヴァディムの映画に出演した。

 4回の結婚のうち、この最初の結婚は5年で終わってしまったが、ヴァディムとの仕事は世間を騒がせ、一部にとっては性愛のアイコン、そして一部にとっては解放の象徴という存在になった。

『素直な悪女』の予告編では、官能的なマンボのリズムに合わせて踊り、砂の上で寝ころぶ姿に「あなたはハッと息をのみ、一生その姿を忘れない」と宣伝された。

 フェミニストの作家シモーヌ・ド・ボーヴォワール(Simone de Beauvoir)氏は、バルドーは「自分が気に入ったことをして、それが騒ぎになる」と語ったことがある。

■非嫡出子として生まれたローレン

 一方、20日に75歳を迎えたローレンは、イタリア・ナポリ(Naples)郊外のスラム街で未婚の母の元に生まれた。美人コンテストに何度か挑戦し、映画の小さな役をもらえるようになった。51年、わずか16歳で奴隷の少女を演じ、同年、最初で最後となる上半身のヌードも披露した。

 1953年、後の夫となるカルロ・ポンティ(Carlo Ponti)と出会ったことでローレンのキャリアは大きく伸びることになる。22歳年上のプロデューサーだったポンティは、当時結婚していたが、その後2人の息子をもうけ、2007年ポンティが94歳で死去するまで添い遂げた。

 しかし、ローレンとポンティとの最初の結婚は、イタリアがメキシコでのポンティの離婚を認めなかったため、ポンティが重婚罪で起訴されるに至った。この時の結婚は無効となったが一緒に暮らし続け、当時は大きな物議を醸した。

 ディノ・リージ(Dino Risi)、ヴィットリオ・デ・シーカ(Vittorio De Sica)、エットレ・スコーラ(Ettore Scola)などのイタリアの名監督と仕事をしているという点では、ジャン・リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)やルイ・マル(Louis Malle)らフランスの名監督と共演したバルドーと同じだが、ローレンはハリウッド(Hollywood)を目指した。

 クラーク・ゲーブル(Clark Gable)、ピーター・セラーズ(Peter Sellers)、ジョン・ウェイン(John Wayne)、フランク・シナトラ(Frank Sinatra)らビッグスターと共演し、1962年の『ふたりの女(Two Women)』でアカデミー賞主演女優賞を獲得し、1991年には同名誉賞も授与された。

 90本余りの出演作で、イタリアのマルチェロ・マストロヤンニ(Marcello Mastroianni)と共演したのは13本。マストロヤンニはおそらく最も有名なローレンの共演者で、『昨日・今日・明日(Yesterday, Today and Tomorrow)』(1964年)で喜びの余り大声を出しながら一枚一枚服を脱いでいくローレンを見つめていたのもマストロヤンニだ。最後の共演作となったのは、1994年のロバート・アルトマン(Robert Altman)監督作『プレタポルテ(Pret-a-porter)』だった。

■女優業を続けるローレンと動物愛護活動に取り組むバルドー  

 自ら母親役として出演する自伝映画の製作を予定するなど、女優業を今でも続けるローレンとは違い、バルドーはスクリーンから消えて久しい。

 2回目の結婚で誕生した子どもを離婚した夫に引き取られ、セレブとしての生活に対応できず、40歳を前にして映画の世界から離れ、セックスシンボルから動物たちの救世主へと転身した。

 ヒット作にも出演しているバルドーだが、72歳の誕生日のインタビューで、動物愛護活動が人生で最も素晴らしい成功だと語っている。

 仏極右政党国民戦線のジャンマリ・ルペン(Jean-Marie Le Pen)党首を強く支持し、イスラム教徒を侮辱するなど人種的憎悪を駆り立て訴えられたこともある。

 そんな2人が90年代中ごろに刃を交えたことがある。広告で毛皮を着用したことローレンを、バルドーが「毛皮を着ることは、お墓を背負うことだ」と非難したのだ。しかし、ローレンは何の反応も示さなかった。(c)AFP/Claire Rosemberg