【6月30日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)上院議員の名前が有名になる前から、ハリウッドの映画やテレビにはさまざまな黒人の大統領が登場してきた。『ディープ・インパクト(Deep Impact)』(1988年)のモーガン・フリーマン(Morgan Freeman)、『ザ・マン/大統領の椅子(The Man)』(1972年)のジェームズ・アール・ジョーンズ(James Earl Jones)などが演じた大統領たちだ。

■ハリウッド映画の描く黒人大統領像が少しずつ影響

 一部の専門家は、このように映画やテレビに登場した多くの黒人大統領のおかげで、黒人の大統領候補に投票するという考えに対する米国有権者の抵抗がなくなったと指摘している。

The American President in Popular Culture(大衆文化における米国大統領)』の著者ジョン・W・マトビコ(John W. Matviko)氏は、若者の間での絶大なオバマ人気の一要因をハリウッドが担っているとみている。

 マトビコ氏によると、大衆文化には、伝統的なものから少し外れた考え方を人々が少しずつ受け入れるようにし向けるという機能があるという。テレビや映画で黒人大統領が好意的に描かれてきた結果、「黒人が大統領である」という考え方は一般的なものになり、もはや問題ではなくなったのだと、同氏は分析している。

■テレビドラマ『24』もオバマ人気に一役?

 人気テレビドラマ『24』で黒人大統領を演じたデニス・ヘイスバート(Dennis Haysbert)は、最近のロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)紙のインタビューで、「率直に言えば、私の役と私の演じ方、そして脚本家による脚色によって、黒人大統領が実現可能だという考え方が米国民に受け入れられるようになったのだと思う」と語った。

 一方、南カリフォルニア大学(University of Southern California)の映画芸術学部でアフリカ系米国人の映画や文化を専門にしているトッド・ボイド(Todd Boyd)氏は、ハリウッドが2008年の大統領選に与えた影響には懐疑的だ。

「テレビや映画で、ジェームズ・アール・ジョーンズ、モーガン・フリーマン、デニス・ヘイスバートらが黒人大統領を演じたからといって、オバマ議員が大統領になる可能性があるとは言い難い。拡大解釈だと思う」とボイド氏は語る。だが、テレビや映画で描かれた「黒人大統領」が無意識のうちに社会のある部分の難しさを軽減している可能性はあることは認めている。

■根底にあるのは公民権運動との意見も

 シラキュース大学(Syracuse University)で大衆文化学を担当するロバート・トンプソン(Robert Thompson)教授は、ボイド氏に同意見だ。オバマ議員に対する国民の態度の変化にはハリウッドがある程度の役割を果たしているかもしれないが、過大評価すべきではないと、トンプソン氏は言う。

「モーガン・フリーマンやデニス・ヘイスバートがオバマ議員の人気に大きな影響を与えていると判断することは、公民権運動の重要性やオバマ議員のカリスマ性を過小評価することになる」として、同議員の人気は公民権運動やオバマ議員の個性が根底にあると指摘している。(c)AFP