【9月12日 AFP】世界中のヘビメタファンに吉報だ。米国のヘビーメタルバンド、メタリカ(Metallica)が12日に世界リリースするニューアルバムは、バンドの原点である「ヘビメタ」のスピリッツを取り戻した内容に仕上がっている。

■ヘビメタへの原点回帰アルバム

 新アルバムのタイトルは『デス・マグネティック(Death Magnetic)』。メタリカにとって単なる5年振りのアルバムというだけではない。これまで以上に大音量でダーク、まさに「ヘビメタ」の神髄を取り戻している。

 この原点回帰を促したのは、2年前からメタリカのプロデューサーを務めているリック・ルービン(Rick Rubin)だ。これまでもパブリック・エネミー(Public Enemy)、ジョニー・キャッシュ(Jonny Cash)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)のプロデュースを手掛けてきたルービンは、1986年のメタリカのアルバム『メタル・マスター(Master of Puppets)』を作ったときのインスピレーションを思い出してほしいと、メンバーに語ったという。

「昔の音楽のように作ったんじゃなくて、昔のスピリッツで曲を作ったんだ」。ルービンは、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙のインタビューでこう語った。

 アルバム『セント・アンガー(St. Anger)』、『ロード(Load)』、『リロード(Reload)』に収録されていた、気取った退屈な曲のことはもう忘れよう。最盛期のメタリカが戻ってきたのだ。暴れまくるギター、壊れんばかりにはじけるドラム、絶叫するボーカル、心臓が止まりそうなテンポ、そして脳みそに響きわたるリズム――。

 ジャケットカバーには、『メタル・マスター』のジャケットに使われた墓地を思い起こさせるような棺と、磁場に引きつけられるようにその周囲に集まった砂鉄が描かれている。収録曲は「サイアナイド(Cyanide)」や「マイ・アポカリプス(My Apocalypse)」など。ファンもこの仕上がりに満足しているようだ。

■ここ数年の低迷を打ち切る出来

 メタリカは、コンサートを開くたびにスタジアムを満員にし、アルバムの総売上は5700万枚に上る人気バンドだ。しかし、最近はパッとしない時期が続いていた。

 1999年に発表したサンフランシスコ交響楽団(San Francisco Symphony)との競演ライヴアルバムは、ファンにとっては「意味のない活動」の典型になった。2003年の奇抜なアルバム『セント・アンガー』でも、ギタリストのカーク・ハメット(Kirk Hammett)のソロが少なく、ヘビメタファンをがっかりさせた。

 翌年に公開されたドキュメンタリー映画『メタリカ:真実の瞬間(Some kind of monster)』では、解散の危機に立つメタリカが描かれた。当時はドラムのラーズ・ウルリッヒ(Lars Ulrich)とボーカルのジェームズ・ヘットフィールド(James Hetfield)の関係が悪化し、メンバーをまとめる最終手段としてセラピストを雇うほどだった。

 だが『デス・マグネティック』のリリースによって、こうした過去の低迷を断ち切ることができるだろう。音楽誌ローリング・ストーン(Rolling Stone)は同アルバムについて、次のように評している。「『デス・マグネティック』は、音楽界におけるロシアのグルジア侵攻だ。眠れる巨人が突然、攻撃してきたのだ」(c)AFP