【7月9日 AFP】米国のアル・ゴア(Al Gore)前副大統領が提唱する、地球環境保護コンサート「ライブ・アース(Live Earth)」が7日、世界9都市で同時開催された。ポップスターや政治家、ハリウッドの著名人らが地球温暖化の危機に対して関心を持つよう呼びかけた。

 7日のグリニッジ標準時午前2時にシドニーから始まった24時間コンサートは、東京、上海、ヨハネスブルク(Johannesburg)、ハンブルク(Hamburg)、ロンドン、ワシントンD.C.、ニューヨーク、リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)へとリレーされ、インターネットや世界120のテレビ局で中継された。主催者は全世界で約20億人が視聴すると予測した。

米国ではニューヨーク郊外のジャイアンツ・スタジアム(Giants Stadium)で、80年代に活躍し最近再結成されたパンクグループ、ポリス(The Police)や、ラッパーのカニエ・ウェスト(Kanye West)が演奏した。またワシントンD.C.の会場では、ガース・ブルックス(Garth Brooks)やトリーシャ・イヤウッド(Trisha Yearwood)も登場した。アーティストたちは、一人一人が持続可能なライフスタイルの責任を負うよう観客に訴えた。

 環境活動家としても著名なゴア前副大統領は、ニューヨーク会場から世界中の観客に向け「あなたがライブアースです(You are Live Earth!)」と呼びかけた。地球上に残る「二酸化炭素の足跡」を減らし、各国政府や産業界に温室効果ガス排出量の削減を働きかけるなど、環境を守るための「7つの誓い」を唱えた。

 前副大統領を紹介した映画俳優のレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)は、「われわれ全員がこの問題に直面している。自分たちのためにも未来の世代のためにも、失敗は許されない。SFの世界でしかありえないと思われていた状況が現実の、否定できない事実となっている」と警告した。

ニューヨーク会場を訪れたセネガル人のFatou Salleさん(25)は、「これは私たちの世代のコンサート。ゴア氏は物事に変化を与える良いことをしている」と述べた。

ロンドンではレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)、メタリカ(Metallica)、ビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)などがウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)で演奏し、午後10時には省エネルギー行動の象徴として会場の照明が消された。9時間におよんだコンサートのとりは、マドンナ(Madonna)が務めた。ブラック・アイド・ピーズ(Black Eyed Peas)の「ファーギー」ことステイシー・ファーガソン(Stacy Ferguson)は、「現在の状況や古い習慣に別れを告げるのは難しいこと。けれど、それが難しいのは正しいことだから」と語った。

元ピンク・フロイド(Pink Floyd)のボーカル、ロジャー・ウォーターズ(Roger Waters)は記者会見で、有権者は「環境問題に関して明確な政策を持たない政治家には投票しない、とはっきり意思表示しなければならない」と語った。

 ハンブルクではシャキーラ(Shakira)とエンリケ・イグレシアス(Enrique Iglesias)、ラッパーのスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)らが雨の中、パフォーマンスを披露した。

ヨハネスブルクのコンサートでは、チケットがほぼ完売となった。第49回グラミー賞(The 49th Annual Grammy Awards)を受賞した南アフリカのソウェト・ゴスペル・クワイヤ(Soweto Gospel Choir)やベナンの歌手アンジェリク・キドジョ(Angelique Kidjo)、英国の歌姫ジョス・ストーン(Joss Stone)、レゲエグループのUB40らが参加した。

ブラジル、リオデジャネイロの会場には40万人が集まり、レニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)、シューシャ(Xuxa)、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)らが出演。同日、「新世界七不思議」のひとつに選ばれたばかりのコルコバード(Corcovado)の丘のキリスト像(Cristo Redentor)を背に、コパカバーナビーチ(Copacabana beach)で開催された。

一方、上海の会場に集まった観客は約2700人とわずか。しかし、すでに世界1位の温室効果ガス排出国となりつつある中国において、気候変動に対する人々の意識を高めることに意義が置かれた。大学院生のSun Jieさんは、「この種のコンサートは人々、とりわけ若者の環境保護への意識を高めることができると思う」と語った。

 ライブアースでは再生可能エネルギーを多く利用し、ステージもリサイクル可能な素材で作られた。ロンドン会場で販売されたハンバーガーの箱はすべて、生物分解性の繊維とサトウキビのパルプで作られ、売店で使用された料理用油はバイオディーゼル油の原料として回収された。

 スポンサー企業らも環境問題への取り組みをアピールした。ハイブリッド4WDの新型エコカー「グリーン(green)」を宣伝する米国自動車ブランドのシボレー(Chevrolet)は、「ライブアース」のウェブサイトのスポンサーとなり、ダイムラークライスラー(DaimlerChrysler)はハンブルク会場のスポンサーになった。

しかし、コンサート開催自体が環境汚染を作り出すという非難など、ライブアースに対する批判も聞こえた。ワシントンD.C.では「Live Earthは地球を殺す」と書かれたポスターも貼られた。ゴア氏はワシントンD.C.からニューヨークまで電車を使用したが、自家用ジェット機で開催地に到着したスターもいた。(c)AFP/Luis Torres de la Llosa