【5月21日 AFP】南仏カンヌ(Cannes)で開催中の第66回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で20日、三池崇史(Takashi Miike)監督の『藁の楯(Shield of Straw)』の公式上映が行われた。だが批評家からは、「こっけいで陳腐な展開のオンパレード」など、手厳しい意見が目立った。

 物議を醸す作品で知られる三池監督の最新作『藁の楯』は、幼い孫娘を惨殺された祖父が犯人の殺害に懸賞金をかけたため日本中が沸き立つなか、その犯人を警護して警視庁まで移送せねばならないSPらの葛藤を描くストーリー。

 カンヌのコンペティション部門に出品された20作品の1つで、緻密なアクションシーンに満ちたスペクタクル映画との呼び声に、カンヌでも期待とともに上映が待たれていた。

 だが、映画批評家らは、犯人を護送する新幹線内でSPが正義と職務との板挟みになった苦悩を長々と語る場面は本筋から逸脱しているなどと指摘した。

■目立つ酷評

 英映画評論家ジェフ・アンドルー(Geoff Andrew)氏はツイッター(Twitter)に「こっけいなほど過剰な演技に無意味さの強調、そうした陳腐な展開が延々と続く」と書き込んだ。

 映画誌「CineVue」もウェブサイトに『藁の楯』評を掲載。「完全な失敗作」との講評で採点は5点満点中、1点だった。

 カルト映画専門誌「エレクトリック・シープ(Electric Sheep)」も、「鉛の風船が失墜するようだ」と失望感を表現した。

■好意的な意見も

 一方、アイリッシュ・タイムズ(Irish Times)の映画評では「アクションシーンは一級品」「自由民主主義の理念や陪審制度に、ここまで向き合ったアクション映画は多くはない」などと好意的。『藁の楯』は、若き日のクリント・イーストウッド(Clint Eastwood)が極悪犯の射殺も辞さない刑事を演じた『ダーティー・ハリー(Dirty Harry)』シリーズの対局にある作品と評し、ハリウッドでのリメイクもあり得ると予想している。

■三池監督は?

 一方、三池監督本人は、日本映画界は伝統的な大作アクション映画に背を向けていると嘆く。また、安全保障上の問題から日本では撮影許可が下りなかったため、新幹線車内の場面は台湾で撮ったと明かした。

 三池監督も、26日に発表になる最高賞パルムドール(Palm d’Or)を『藁の楯』が受賞することは難しいと認めたうえで、「1つの刺激になれば嬉しい」と述べ、こうした毛色の変わった作品がカンヌで公式上映されて幸せだと語った。(c)AFP/Deborah COLE