【3月24日 AFP】50年以上前の旧ソ連で山に出かけ、死因不明の遺体となって見つかった学生グループの謎を『ダイ・ハード2(Die Hard 2)』などのアクション映画で知られるレニー・ハーリン(Renny Harlin)監督が映画化した。

 タイトルは『The Dyatlov Pass Incident』(ディアトロフ峠事件)。1959年に旧ソ連のウラル山脈(Ural Mountains)で、「死の山(Mountain of the Dead)」と呼ばれる山を目指した学生9人の登山グループが謎の死を遂げた実話に基づいている。

 実際の事件では、9人の遺体は広い範囲にわたって別々に発見され、グループが泊まっていたテントは内側から切り裂かれていた。

 1人の遺体は高レベルの放射能に汚染され、またグループ内で唯一人だった女性の遺体からは舌が切り取られていた。さらに奇妙に変色した遺体や眼球を失っていた遺体、内臓に致命傷を負っているのに外傷のない遺体もあり、多くの遺体は恐怖で凍り付いたように見えた。

 軍が調査を行ったが「克服不可能な自然の力」によって死亡したという謎の結論だけを残し、調査は終了。学生たちの死因は現在も解明されていないが、事故と考える人は少ない。

■軍の秘密実験を目撃?

 旧ソ連時代、この事件は機密として封印されていたが、ソ連崩壊後の90年代になって当時調査を担当したレフ・イワノフ(Lev Ivanov)氏が、学生たちは空に現れた謎の火の玉のエネルギーによって殺されたとする記事を発表し、これをきっかけにさまざまな説が語られるようになった。その中には「聖地」に踏み入ったために現地の先住民に殺されたという説や、未確認生物「イエティ」や宇宙人に殺されたという説、新兵器の実験に居合わせたり機密を目撃したりしたために軍に殺されたとする説まである。

 グループの一員だったが途中で登山を止めて帰ったため唯一生還したユーリ・ユディン(Yury Yudin)氏は昨年10月、コムソモリスカヤ・プラウダ(Komsomolskaya Pravda)紙に、一行の死因は秘密の実験を目撃して汚染されたことだと考えていると語った。同氏は「何か自然の力によって死んだのならば秘密にされるわけがなく、53年たった今になっても話題になるようなことはなかっただろう」と述べている。

 一方、米露合作のハーリン監督の映画では、現代の米国人の学生5人がタイム・トラベルして事件のあった場所を訪れ、極秘実験が行われた掩蔽(えんぺい)壕にソ連兵が学生たちの遺体を隠している場面を目撃する。映画は、米海軍が1943年に行った実験中に艦船の瞬間移動(テレポーテーション)が起きたといううわさもある「フィラデルフィア計画(Philadelphia Experiment)」にも触れている。

 ただし、グループの死の真相の解明を試みた映画ではなく、あくまでハリウッド版のフィクションだという。米英露3か国の俳優が共演し、一部は露北西部のムルマンスク(Murmansk)州で撮影された。制作予算は450万ドル(約4億3000万円)で2月28日にロシアで封切られ、すでに420万ドル(約4億円)を稼ぎ出すヒットとなっている。(c)AFP/Anna Malpas