【11月28日 AFP】ピーター・ジャクソン(Peter Jackson)監督による映画『ホビット 思いがけない冒険(The Hobbit: An Unexpected Journey)』のワールドプレミアが28日、ニュージーランドの首都ウェリントン(Wellington)で行われ、ジャクソン監督やキャストたちが登場した。

「ホビット」3部作は製作費5億ドル(約410億円)を投じてニュージーランドで一気に撮影された。恐ろしいドラゴン「スマウグ(Smaug)」から失われたドワーフの王国エレボール(Erebor)を取り戻すビルボ(Bilbo)の冒険を描く物語だ。

 ラジオ・ニュージーランド(Radio New Zealand)に出演したジャクソン監督は、『ホビット』3部作が大ヒット映画「ロード・オブ・ザ・リング(The Lord of the Rings)」3部作ほどの人気を獲得できるかどうか、ひやひやしていることを明らかにし、長期間に及んだ苦しい撮影の中で「客観性を全部失った」と語った。

「完璧になるものなんてないし、なるわけがない。撮影が終わったのは完璧な映画を作れたからだなどと言うのは本当に間違っている。そんなことは絶対に起きないし、できやしない」(ピーター・ジャクソン監督)

 アカデミー賞女優のケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)はどうしてもこの映画に出演したかったという。「彼(ジャクソン)のことを、ちょっとだけ追いかけ回したわ。ずっとピーターのファンだったの」

「彼は驚くほど自由で、自由な発想を持ち、自由に人と協力できるし、これほどの巨大な3部作が双肩にかかっているにもかかわらず、どういうわけか映画監督として、とても俊敏なの」

■度重なるトラブル、製作期間6年

「ホビット」の映画化は、それ自体がひとつの伝説になった。プロジェクトが立ち上がった2006年から公開まで、実に6年以上の年月がかかったという。

 当初はメキシコのギレルモ・デル・トロ(Guillermo Del Toro)監督が「ホビット」の指揮をとる予定だった。だが、ハリウッドの製作会社との書籍の権利をめぐる法廷闘争で製作が何年も延期し、とうとう2010年に降板した。その後を引き継いだのがジャクソン氏だった。

 ようやく撮影にゴーサインが出たところで、今度はニュージーランドで労働争議が起こり、国外での製作をせざるを得ない状況に陥りつつあった。最終的に政府が介入し、労働法を改正することで問題は解決した。

 ただジャクソン監督の体調不良や前週には動物虐待疑惑も浮上し、さらには原作者のJ・R・R・トールキン(J.R.R Tolkien)の相続人からマーケティングの権利をめぐり米国では訴訟を起こされたりと難題が山積した。

 批評家も、わずか300ページの原作を3部作にする必要があったのかと疑問を投げかけており、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズが29億ドル(約2400億円)の興業収入を記録したことから、収益が芸術的判断を上回ったのではないかの声も上がっている。

■ファンはヒットを確信

 それでもファンの一人テレサ・コリンズ(Theresa Collins)さんは、ジャクソン監督の成功を確信しているようで、「(ロード・オブ・ザ・リング」ほどは)ダークではなく、異なったものになると思う」とAFPの取材に語った。「それでもロード・オブ・ザ・リングのファン層がついていて、そこからさらにファンは増えることになると思う」

「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズはアカデミー賞17賞を受賞する大成功を収めている。

 第1部『ホビット 思いがけない冒険』は2013年12月に全世界で公開される。第2部『ホビット スマウグの荒らし場(The Hobbit: The Desolation of Smaug)』は2013年12月、第3部『ホビット ゆきて帰りし物語(The Hobbit: There and Back Again)』は2014年7月の公開予定だ。(c)AFP/Neil Sands