【12月23日 AFP】ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を舞台にした、女優アンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)の初監督作品『In the Land of Blood and Honey』が22日、首都サラエボ(Sarajevo)で特別上映され、観賞した地元の人々から高い評価を受けた。

 上映後にAFPの取材に応じた女性は、「とても現実的な映画で、心を動かされた。戦争を体験した人にとっては観るのがつらい作品だろう。とても感情的になった」と語った。

 ボスニアでは1992~95年、モスレム人(ボスニア人、イスラム教徒)、クロアチア人、セルビア人の3民族が内戦に突入し、10万人以上が命を落とした。強制収容所での虐待もあったといわれ、ボスニア政府の公式統計では内戦中、約2万人の女性がレイプ被害に遭ったとされている。

In the Land of Blood and Honey』は、戦時下のボスニア・ヘルツェゴビナを舞台にした、モスレム人女性とセルビア人男性のラブストーリー。地元メディアがレイプ被害者の女性が加害者のセルビア人男性と恋に落ちる作品だとの憶測を報じ、サラエボで論争を巻き起こしていた。

 実際のストーリーはこうだ。内戦前に一時的な関係を持った男女。女性はセルビア人部隊に捕らえられるが、その指揮官が元恋人だった。男性は女性をかばうが、配置換えとなり、女性はともに捕まった女性たちと同様に虐待やレイプの犠牲者となっていく。

 映画では、レイプや処刑など数々の戦争犯罪がありのままに描かれている。

 鑑賞した人の多くは、隣人や友人を敵に変えてしまった戦争の恐ろしさがリアルに描かれているとして、映画を絶賛している。年金受給者の男性は、「次世代への教訓だ。ボスニアや旧ユーゴスラビアに住む人はみんな観るべきだ。ボスニアで実際に起こったことを描いているから感動する」と話した。

 ただ、批判的な意見もある。30代の女性は、「この映画はひどい。わたしは(サラエボ)包囲を実際に目撃したが、こんなふうではなかった」と批評した。

 同作品は今月28日まで1日2回、サラエボで上映される。米国では24日に、欧州では来年2月上旬に封切られる。(c)AFP

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