【12月29日 AFP】見慣れた牛追い祭りの風景の中、疾走する雄牛の群れと逃げる男たちの間を、トム・クルーズ(Tom Cruise)とキャメロン・ディアス(Cameron Diaz)がバイクに乗って駆け抜けていく――。

 スペイン南部の古都カディス(Cadiz)の趣あふれる石畳の街角で、前月、ジェームズ・マンゴールド(James Mangold)監督の映画『Knight and Day(ナイト・アンド・デイ)』の撮影が行われた。米国で2010年7月に公開予定のアクションコメディーだ。

 制作側が大ヒットを目指して意気込むのは当然として、この映画に期待をかけるのは地元も同じ。撮影が行われたカディスや近隣セビリヤ(Seville)の市当局は、映画の成功で低迷する地元観光業界が活性化することを願っている。

■古都の小路での撮影許可、街をアピール

 カディス市はこのほど、歴史ある古い路地での撮影制限を緩和し、キャスティング専用の事務所も設置。撮影中の警備にあたる警察官の手配にも協力した。「街のプロモーションのためです。映画監督らを呼び込み、カディスの観光イメージを海外にアピールしようとしています」と市観光局。

 従来のスペインの観光モデルは、さんさんと太陽の降り注ぐ海辺のビーチだった。しかし近年、こうした海岸リゾートは老朽化が進み、客足は東地中海の安価なリゾート地に移りつつある。不況も影響し、スペインを訪れた観光客数は前年、十数年ぶりに減少。2.3%減の5730万人となり、外国人観光客数ナンバー2の座を米国に譲った。

 政府は、今年はさらに前年比マイナス10%となると予想している。

 観光客数が落ち込むなか、複数の地方自治体は新たな観光資源として、世界規模で公開される映画に注目。これまで見過ごされがちだった街並みや景色の魅力をアピールしようと、撮影場所に地元の街並みを提供する試みが広がっている。(c)AFP/Daniel Silva