【9月8日 AFP】第66回ベネチア国際映画祭(Venice International Film Festival)コンペ外部門に出品されているオリヴァー・ストーン(Oliver Stone)監督作品『South of the Border』が7日に上映され、映画に登場するベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領がストーン監督とともに登場した。

 チャベス大統領が「中南米のルネサンスの一部を描いている」と語るこの作品は、南米を席巻している市民発信の変化における同大統領の役割に注目している。

 レッドカーペットに姿を現した大統領は、20分にわたって詰めかけた支持者に言葉をかけ、サインをし、インタビューに応じ、心のこもったキスを贈るなどした。

 上映後には報道陣に対し、「市場経済こそが救済で社会主義は破たんだというが、その逆だ。大事なのは、米国と欧州の人たちに真実を知ってもらうことだ」と語った。

 インタビュー映像に米メディアの報道や政府高官の声明などを織り交ぜながら、ストーン監督は「チャベス大統領は、FOXニュース(Fox News)などの米メディアでしばしば描かれるような『不倶戴天の敵』ではない」ということを伝えようとしている。描かれているのは、1998年のチャベス大統領就任以降のベネズエラの「平和的な革命」と、同国の変化から生まれた周囲の国々の連鎖反応だ。

 ドキュメンタリー制作は「解放感を感じる体験」だったというストーン監督は、この作品は、チャベス大統領に対するメディアの攻撃に対抗しながら、同大統領について語られる一般的な意見の愚かさ具合を明確に示していると語る。

「我々は南米を席巻している変化を見た。これは世界には知られていない重要な歴史的現象だ」

「依然として問題は多いが、2000年から起こっているものは素晴らしい変化だ。ベネズエラでは社会が急速に改善されている。貧困率が半減したことは世界銀行(World Bank)も認めている」

「南米では下から社会運動が起こる」と語るのは脚本を書いたタリク・アリ(Tariq Ali)氏。

 アリ氏はさらに、ボリビアのエボ・モラレス(Evo Morales)大統領、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領、パラグアイのフェルナンド・ルゴ(Fernando Lugo)大統領、そしてチャベス大統領らが「選挙で勝ち、国民の救済を実際に始めていることが欧米の人たちを驚かせる。なぜなら欧米の人たちはそんなことに慣れていないからだ」と説明した。

 ストーン監督は中南米各国の指導者にインタビューしているが、そのすべてが社会の底辺から台頭してきた指導者たちだ。

 キューバのフィデル・カストロ(Fidel Castro)前国家評議会議長を描いた『コマンダンテ(Comandante)』(2003年)、中米エルサルバドルを舞台にした『サルバドル/遥かなる日々(Salvador)』(1986年)などを手がけてきたストーン監督は、貧しい家庭で育ったチャベス大統領は、その支持者にとって、市民から起こす変化の象徴的な人物だと説明する。

 作品の中で監督のインタビューを受けたアルゼンチンのクリスティナ・キルチネル(Cristina Kirchner)大統領は、「これほど多くの国々の指導者が、彼らが統治する国民に似ているというのはこれまでになかったことだ」と語っている。

 プロデューサーのフェルナンド・サリシン(Fernando Sulichin)氏は、配給会社がまだ決定していないこの作品は、インディペンデント系の配給会社やケーブルテレビ会社などを通じて、「独自の発展をするだろう」と話した。

 一方、チャベス大統領に反対する野党などは、同大統領は人々を操作し、言論の自由を奪っていると非難。2月の国民投票で勝利を収めたことで同大統領が終身大統領となる可能性があり、さらに独裁的支配が強まると警告している。(c)AFP/Gina Doggett