【12月10日 AFP】2009年2月のアカデミー賞(Academy Awards )発表まで続く映画界のアワードシーズンが幕を明けたが、オスカーの行方を占う上で貴重な指標となる第66回ゴールデン・グローブ賞(Golden Globe Awards)の受賞候補作品がいよいよ11日に発表される。現在、最も注目されているのが、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生(The Curious Case of Benjamin Button)』と『ダークナイト(The Dark Knight)』だ。

■有力候補の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

 デヴィッド・フィンチャー(David Fincher)監督の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は、米作家F・スコット・フィッツジェラルド(F. Scott Fitzgerald)の1922年の短編小説を映画化したもので、主演のブラッド・ピット(Brad Pitt)が老いた姿で生まれ、年を重ねるに連れ徐々に若返っていくという男を演じている。共演はケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)。米国ではまだ一般公開されていないが、試写会で観た批評家や観客は称賛している。

 ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)紙の映画・音楽賞専門サイトThe Envelope.comの評論家トム・オニール(Tom O'Neil)氏は、「専門家は『ベンジャミン・バトン』が最有力と見ていると思う」と語る。

■H・レジャーの『ダークナイト』にも注目

 高い評価を受ける『ベンジャミン・バトン』だが、『ダークナイト』など強力なライバルも多い。

 7月の公開以降、世界で10億ドル(約926億円)近い興行収入を記録しているクリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)監督の『ダークナイト』は、「ヒーローもの」と言われるジャンルを超越した傑作だと絶賛されている。

『ダークナイト』でもう1つ注目を浴びているのは、ジョーカー(Joker)役で迫真の演技を見せた故ヒース・レジャー(Heath Ledger)が、故人としてオスカーを受賞できるかということだ。

「問題は『ダークナイト』が今年の最高傑作かということだが、今年を代表する作品であることは間違いない。ゴールデン・グローブは、大作と言われるもの、大ヒット作、人気作品を評価する」とオニール氏は語る。

■そのほかの有力候補

 同氏はそのほか、マイナー作品の中にも『ベンジャミン・バトン』や『ダークナイト』のライバルとなりそうな注目作があるという。ショーン・ペン(Sean Penn)が米国のゲイ権利活動家ハーベイ・ミルク(Harvey Milk)を演じたガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)監督作品『ミルク(原題、Milk)』、インド・ムンバイ(Mumbai)を舞台に、貧困から脱却しようとテレビのクイズ番組に出演する少年のラブストーリーを描いたダニー・ボイル(Danny Boyle)監督の『スラムドッグ・ミリオネア(原題、Slumdog Millionaire)』などだ。オニール氏は人々を高揚させるこれらの作品は、作品賞にノミネートされる可能性が高いと語る。

 そのほか、『タイタニック(Titanic)』コンビのレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)とケイト・ウィンスレット(Kate Winslet)が再び共演し、1950年代のうっ積した感情を抱える郊外居住者を演じたサム・メンデス(Sam Mendes)監督作品『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで(Revolutionary Road)』、英ジャーナリストのデヴィッド・フロスト(David Frost)がリチャード・ニクソン(Richard Nixon)元米大統領に行ったインタビューをもとにした舞台の映画版でロン・ハワード(Ron Howard)監督の『フロスト×ニクソン(Frost/Nixon)』、メリル・ストリープ(Meryl Streep)演じる尼僧がフィリップ・シーモア・ホフマン(Philip Seymour Hoffman)演じる僧侶と対立する『Doubt』などもノミネートに絡んでくるとみられる。

 一方、映画情報サイトHollywood.comの編集者ルー・ハリス(Lew Harris)氏は、今回のアワードシーズンは各賞で受賞作が分かれるだろうと指摘している。

■近年のゴールデン・グローブ受賞作とオスカー受賞作は一致しない

 歴史的にオスカーの行方を占うものとしてとらえられてきたゴールデン・グローブ賞だが、近年で見ると、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の作品賞は2003年の『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(The Lord of the Rings: The Return of the King)』を最後に、別々の作品が受賞している。しかしそれでも、先に発表されるゴールデン・グローブ賞がアカデミー賞ノミネートの全体像を形作り、有力候補にとってははずみとなっている。ゴールデン・グローブ賞の受賞発表は、09年1月11日に行われる。(c)AFP/Rob Woollard