【5月19日 AFP】(5月20日 写真追加)第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)5日目の18日にワールドプレミアが行われた『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国(Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull)』。そのウラには、映画に劣らず魅力的な考古学上の逸話がある。映画に登場するクリスタル・スカル、いわゆる「水晶ドクロ」をめぐる裏話だ。

 製作総指揮を務めるジョージ・ルーカス(George Lucas)は、記者会見で「人々がその存在を信じ、考古学者が探しているような遺物が、実際に見つかるものだ。そして人々は、そうした物に超自然的な力が宿っていると考える」と語っている。

■アステカ文明の遺物とされる12個のドクロ、続々発見

 1924年、銀行家から冒険家に転身した英国人のフレデリック・ミッチェル・ヘッジス(Frederick Mitchell-Hedges)は、失われたアトランティス大陸を発見するために南米のジャングルに向かい、そこで水晶のドクロを見つける。

 このドクロを受け継いだ彼の娘は、2007年に100歳で亡くなったが、「これにさわったら不思議な感覚に襲われて、その夜にはなぜか古代マヤ時代の儀式の夢を見るの」と生前語っていた。不幸をもたらす力が宿っていると考えられていたために「呪いのドクロ」とも称されていたこのドクロについて、ミッチェル・ヘッジスは「3600年前のもの」と主張していた。

 やがてアステカ(Aztec)文明時代のものとされる水晶のドクロがその後も続々発見され、その一部は有名美術館に買い取られた。「宇宙人が作った」「サイキックなエネルギーが宿っている」などさまざまに言われている。

 言い伝えによると、ドクロはアステカ王国の神話で死の世界を支配する神「ミクトランテクトリ(Mictlantecuhtli)」を体現しており、古代アトランティスの民によって生み出されたものとされる。12個と、まだ発見されていない1個の計13個は、オルメカ(のちにマヤ、アステカ)のピラミッドに収められていたが、アステカ人がすべて散逸してしまったとされる。13個を集めてマヤ暦の最終日である2012年12月21日に1列に並べると強大な力を発揮し、世界の崩壊を防ぐとも言われている。

■仏美術館の水晶ドクロは19世紀の偽物

 ところがこの10年間で、専門家らは、アステカ文明時代の遺物という説に疑問を呈するようになっている。

 このどくろを目玉の展示品の1つとしているパリ(Paris)のケ・ブランリー美術館(Musee du Quai Branly)は前月、ドクロは「19世紀後半に作られたものではないか」との見解を示した。仏文化省仏美術館修復研究センター(C2RMF)の調査では、微量に含まれる水分が19世紀のものと判明した上、水晶の精緻な削り方や磨き方から、近代的な道具が使われたと見るのが適当との結果が出たのだ。

 同美術館のドクロは、1878年に探検家アルフォンス・ピナール(Alphonse Pinart)より「アステカ文明時代のもの」との触れ込みで寄贈されたもの。ちなみに美術館は、インディ・ジョーンズ最新作の封切りを記念して、このドクロを20日から一般公開する。

 さらに大英博物館(British Museum)でも、所蔵するドクロについて1996年と2004年の2度調査が行われ、2度とも「偽物と思われる」との判定が下されている。

 世界で発見されている12個のうち、ケ・ブランリー美術館、大英博物館、米スミソニアン研究所(Smithsonian Institute)が1個ずつ所蔵し、残り9個は個人が所有している。このうち、本物であることが証明されたものは1個もない。(c)AFP/Claire Rosemberg


カンヌ国際映画祭の公式ウェブサイト(英語)


<第61回カンヌ国際映画祭動画一覧へ>