【5月12日 AFP】第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)に、フィリピンから2作品が出品される。これを機に、海賊版、高い税金、海外作品の流入などにより打撃を受けているフィリピン映画産業の再興が期待される。

 1本は、パルム・ドール(Palme d’Or)を狙うコンペティション部門に出品されたBrillante Mendoza監督による『Serbis』。リノ・ブロッカ(Lino Brocka)監督による『Bayan Ko(My Country)』以来となる同部門への出品だ。

 もう1本は、映画祭と平行して15日から25日まで開催される監督週間(Directors’ Fortnight)に出品されるRaya Martin監督による『Now showing』。

 かつては世界最大規模の映画産業を誇ったフィリピンだが、その低迷からはなかなか抜け出せずにいる。

「カンヌに選ばれたことは良いニュースだ。この5、6年は悪いニュースばかりだったから」と語るのは、フィリピン映画アカデミー(Film Academy of the Philippines)のレオ・マルチネス(Leo Martinez)氏。

 Mendoza監督とMartin監督は、これを機にインディペンデント系映画、そして映画産業全体が活気を取り戻してくれればと期待しているが、道のりは長いという。

『Serbis』は、アダルト映画を上映する映画館に暮らす家族を描いた作品。タイトルは、映画館の客を相手にする男性の性産業従事者を指している。上映時間約5時間にも及ぶ『Now Showing』は、マニラ(Manila)に暮らす少女と元女優の祖母、海賊版DVDを販売するおばを描いている。

 両作品とも有名俳優は出演しておらず、人生の裏側を描いており、これが興行収入に影響する可能性はある。「映画ファンは楽しむために映画館に行くのであり、毎日見ている貧困や現実は見たくない」(Mendoza監督)からだ。

 また、フィリピンではインディペンデント系映画は重要視されない傾向にある。両監督は海外からの助成金で制作資金を賄ったという。また、マニラ市内でインディペンデント系映画を上映するのはわずか3館のみで、両監督は自分の作品がフィリピン国内で上映されるかどうかも不確かだと言う。

 またメジャーな制作会社の作品も問題を抱えている。「1970年代から90年代初頭にかけての最盛期に、我々は年間200本の映画を制作していた。しかし現在ではわずか50本だ」とマルチネス氏は語る。

 同氏は国内映画不調の原因をハリウッド(Hollywood)映画のせいだと語る。ほとんどの映画館主が、現在公開され大ヒットを記録している『アイアンマン(Iron Man)』などを上映したいからだ。

 さらに別の原因として、映画封切り後すぐに出回る海賊版も挙げている。

 そしてもうひとつの原因が政府が決定した12%の付加価値税に、地方自治体が加算する30%の「娯楽税」だ。そのせいで、制作者側は利益を出すのが困難になっている。(c)AFP/Mynardo Macaraig