【12月19日 AFP】「ロード・オブ・ザ・リング(Lord of the Rings)」シリーズで監督を務めたピーター・ジャクソン(Peter Jackson)が、同シリーズの原作者J・R・R・トールキン(J.R.R Tolkien)の『ホビットの冒険(The Hobbit, or There and Back Again)』の映画化にも携わることが決定した。

 ジャクソンは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの報酬をめぐり、配給会社のニューライン・シネマ(New Line Cinema)を訴え、それに対し『ホビットの冒険』の映画化権も取得しているニューライン・シネマのロバート・シェイ(Robert Shaye)氏が、同監督に『ホビットの冒険』の映画化はさせないと断言するなど、両者間には確執があった。

 しかし、両者は和解に至り、18日にMGMを加えて共同声明が出された。それによれば、ジャクソンと妻で脚本家/プロデューサーのフランシス・ウォルシュ(Frances Walsh)は『ホビットの冒険』の映画化にも制作総指揮として参加することになったという。ジャクソンが監督を務める可能性については明記されなかった。

『ホビットの冒険』の映画は2本になる。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ同様、撮影は同時に行い、一本ずつ公開される。本格的な撮影は2009年にスタートし、映画の公開は2010年、11年になる予定だ。

「意見や立場の相違などは忘れ、ニューラインとともに新しい作品に取りかかれることに大変喜んでいる。中つ国の冒険を続けることができる」とジャクソンは語った。一方のニューライン・シネマのシェイ氏は、「意見の違いを解決し、ピーターとフランシスが『ホビットの冒険』に積極的に参加してくれることを喜んでいる。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ同様に、情熱と誠意をもって取り組み、その才能を発揮してくれるはずだ」と、ジャクソン夫妻が『ホビットの冒険』に関わることを歓迎している。

「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズは3部作で構成され、合計30億ドル(約3400億円)以上の収益を上げている。第3弾『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(The Lord of the Rings: The Return of the King)』は、ファンタジー映画としては史上初めて2004年のアカデミー賞最優秀作品賞を獲得し、映画史も塗り替えた。その年のアカデミー賞では、最優秀監督賞を含む11部門で同作品が受賞した。

 同シリーズは、ニュージーランドで3作同時に撮影が行われるという独特な手法をとった。もし映画がヒットしなければ、予算的に大失敗となる危険性も含んでいたのだ。

 映画界の専門家たちは、『ホビットの冒険』が大ヒットとなるだろうと考えれば、ジャクソンとニューラインの同作品をめぐる争いが解決したのは驚くことではないという。しかし、映画情報サイトMovies.comのルー・ハリス(Lew Harris)編集長は、ジャクソン以外の人物が同作を監督するのは難しいだろうと語る。

「『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズがあれほど大ヒットしたのは、あれがジャクソン監督独自の映像だったからだ」と語り、興行収入で苦戦している『ライラの冒険 黄金の羅針盤(The Golden Compass)』を引き合いに出し、ニューラインは誰もが同じような映画を作れるわけではないということを学んだだろうと加えた。

 ハリス氏はまた、『ホビットの冒険』で2本の映画を作ることにも「彼らが何を考えているのかわからない。愚かな決断だ」と、疑問を投げかけた。

『ホビットの冒険』は、中つ国を舞台にしており、『指輪物語』のプロローグだと広く考えられている。ホビット族のビルボ・バギンズ(Bilbo Baggins)が魔法使いのガンダルフ(Gandalf)、13人のドワーフ族とともに、竜のスマウグ(Smaug)が宝を集めているはなれ山を目指して旅をする物語。『指輪物語』で登場する力の指輪をバギンズが手に入れる場面も描かれている。アニメ版は1977年に米国で公開され、俳優/監督のジョン・ヒューストン(John Huston)がガンダルフの声を演じていた。(c)AFP