【8月25日 AFP】米国の医療保険制度問題を追求した新作ドキュメンタリー映画『シッコ(Sicko)』のピーアールのため、ローマ(Rome)を訪れているマイケル・ムーア(Michael Moore、53)監督が24日、記者会見でイタリアの医療保険制度について語った。

■イタリアの医療保険制度を賞賛

 ムーア監督は会見の中で、米国では医療費の支払いが自己破産やホームレスになる第1の原因になっている現状を指摘。「病気になったために家を失ったというイタリア人がいたら、連れてきてください」と述べ、イタリアの医療保険制度を世界でも有数の制度だと賞賛した。

 その一方で、公的医療費を大幅削減した右派のシルビオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)元伊首相を糾弾。現在の伊首相であるロマーノ・プロディ(Romano Prodi)氏に対し、ベルルスコーニ元首相が残した混乱を収拾するよう強く求めた。

 さらに、米国人5000万人が保険制度に加入していない事実を訴え、「どんな医療保険制度にも問題があるが、少なくともイタリアは国民皆保険制度を有している。それが人権というものではないか?」と疑問を投げかけた。

■全粒粉のパスタで、医療制度充実度も世界1位に!?

 世界保健機関(World Health OrganisationWHO)による医療保険制度の充実度ランキング(2000年度)で、イタリアはフランスに次いで世界2位。

 この事実を作品中で何度も言及していることについて監督は冗談を交えて詫びながら、「だがイタリアは2006年のサッカーW杯でフランスを破り優勝した。サッカーでは勝っている」と巧みにフォロー。「パスタの材料を、代謝されると糖に変わる精製された小麦粉ではなく全粒粉にすれば、イタリアが医療保険制度でも1位になれる」と提案した。ちなみに米国は高額の医療費を使っているにもかかわらず、同ランキングで世界37位だった。

■「私は『不健康』の大臣」

 「暗い時代に生きているときはユーモアが必要」と語る監督は、会見に出席していたリビア・トゥルコ(Livia Turco)伊保健相について、「彼女は“健康”の大臣で、私は“不健康”の大臣だ」と、ジョークを飛ばした。

 さらに「世界中で不正行為を行う米国の資本家や企業の、闇の力が動いている」と警告。「何かを民営化すればするほど、その国は米国と同じ状況になっていくはずだ」と、付け加えた。
 
 ムーア監督は、2003年の『ボウリング・フォー・コロンバイン(Bowling for Columbine)』でオスカー(Oscar)、2004年の『華氏911(Fahrenheit 9/11)』でカンヌ国際映画祭のパルム・ドール(Palme d’Or)を獲得。

 現在撮影中で2008年に公開予定の最新作『Fahrenheit 9/11 1/2』について質問を受けると、「話せば、この作品が日の目を見ることはなくなるだろう」として、コメントを控えた。(c)AFP