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『ダーウィンの悪夢』シンポジウム開催 - 東京

  • 2006年11月22日 19:54 発信地:東京
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写真は映画のワンシーン。(c)AFP BB News

【東京 21日 AFP BB News】半世紀ほど前、アフリカのヴィクトリア湖に肉食の外来魚、ナイルパーチが放たれた。ナイルパーチはもともと湖に生息してきた固有種を食い尽くし、増殖していった。
 湖畔の町にはこの魚を加工・輸出する一大産業が生まれ、地域の経済は潤った。しかし、新しい経済が貧困、売春、エイズ、ストリートチルドレン、ドラッグ、湖の環境悪化という悪夢のような連鎖を生み出していった。

 『ダーウィンの悪夢』はグローバリズムが生み出す矛盾を、フーベルト・ザウパー(Hubert Sauper)監督が4年の撮影期間を費やして描いたドキュメンタリーだ。各国で社会論争までも巻き起こし、タンザニアでは、政治家たちがネガティヴ・キャンペーンを行い上映を妨害しているという。
 17日、プロモーションのため来日した監督を囲み、朝日新聞社編集委員の松本仁一氏、国際平和研究所所長の勝俣誠氏をパネリストに迎え、『ダーウィンの悪魔』シンポジウムが開催された。以下にその一部を紹介する。

フーベルト・ザウパー監督: 『ダーウィンの悪夢』は単なる魚についての映画ではありません。私は常々グローバリゼーションについての映画を撮りたかった。コンゴ民主共和国(旧ザイール)のロシア製の飛行機の中に自分の作りたいものがあると思ったのです。

 9年前にコンゴの内戦の映画を撮りました。その際、国連の飛行機で援助物資を運ぶロシア人やウクライナ人のパイロットたちと友だちになり、彼らは小麦粉だけを運んでいるのではないことを知ったのです。武器や弾薬も運んでいる。つまり、地雷で脚を吹き飛ばされた人たちに配る義足と一緒に、爆薬や地雷も運んでいたのです。そして、その帰りに魚を運ぶ。
 最大のパラドックスは本作品で描いた狂気のマシーンは私たち自身だということです。感じのいいロシア人が子どもたちの命を奪う武器を運んでいる。その事実を目撃した人たちは居心地の悪さを感じるでしょう。この映画では何の解決策も示していません。それはこの映画を制作した目的ではありません。解決策は映画の外にあるべきです。この映画を見てくださった人たちが出口を探さなければいけない、と思ってくれたら、この映画の成果があったといえるでしょう。

松本仁一氏: 自分の主張は留保しておきますが、ナイルパーチの加工現場を撮ったことは価値のあることです。ナイルパーチは1954年8月、ケニア在住のイギリス人の役人が漁獲高を上げるために、初めてヴィクトリア湖に放流しました。
 しかし、根本的な問題は何なのでしょうか。この映画の中でも現地の人々が工場から捨てられるナイルパーチのあらを拾い集めて焼いたり揚げたりして市場で売っていましたが、鱸もかまのほうが栄養豊富でうまい。ヨーロッパ人が切り身しか買わないのなら、ナイルパーチのあらを冷蔵庫に清潔に保管すればいいのです。砂糖醤油で煮付けて現地の従業員たちに持って行ったら、彼らは喜んで食べていましたよ。現地の人が食べるのになぜ捨てるのか。金にならないものは捨てるシステムがいけない。公(国家)が欠如していることが問題なのです。

 コンゴ、アンゴラ、シエラレオネ、どこでも同じです。ダイヤモンド、金、石油のような資源が貧困を招くのは、魚のかまを国民に提供できない国家に問題があるからなのです。

勝俣誠氏: アフリカの多くの国の問題は政治がないことです。エイズ患者やストリート・チルドレンは本来、公的なサービスによって救済すべきです。国民が選んだ政府が市場の力でしか動かない。市場は欲望の惰性。富は購買力のある人に流れていくのです。欲望をコントロールするのが国家の仕事。しかし、この映画から国家の仕事はまったく伝わってこない。皆さんがそう感じたら、この映画は成功したといえるでしょう。

ザウパー監督: 私は4年間、タンザニアに住んでいました。いろいろな出会いがあった。本作はタンザニアの人たちを撮影しながら、自分の魂を撮ったドキュメンタリーでもあるのです。私自身が恐ろしいと思ったこと、魅力的だと思ったことを撮りました。
観客の皆さんにも私が見て感じたことが映像を通して伝わればうれしい。

 特に伝えたかったのは希望です。ストリート・チルドレンや売春で生計を立てるエリザも「すべての白人を殺したい」とは言わずに、「大きくなったら教授になりたい」とか「コンピュータを勉強したい」と言っていたのです。
 この映画を見て、アフリカが近い存在になってほしい。人間関係ができたように感じてほしい。私は何百万人の人たちがラファエルの声を聞いてくれたことに希望を持っています。

『ダーウィンの悪夢』は12月23日より渋谷シネマライズで公開予定。写真は映画のワンシーン。(c)AFP BB News
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