【5月17日 AFP】女優のニコール・キッドマン(Nicole Kidman)やオドレイ・トトゥ(Audrey Tautou)が顔を揃えるなか15日、南仏カンヌ(Cannnes)で12日間にわたって開催される第66回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)が幕を開けた。

■映画祭とセレブ、デザイナーの関係

 権威ある同映画祭は、映画作品の発表の場としてだけでなく、ビッグブランドと気鋭デザイナーの両者にとっても、大きな意味を持つ。世界中に向けて自らのデザインを披露する絶好の機会となるからだ。4月半ばに映画祭の出品作品が公式発表されると同時に、誰にドレスを着てもらうのかブランドが動き始める。もちろん多くのメディアが注目する大物セレブに自分が所属するブランドのものを選んでもらうため、壮絶なレースが繰り広げられる。

 今年審査員を務めるニコール・キッドマンが「ディオール(Dior)」のストラップレスドレスでオープニングセレモニーに登場した写真は、数分のうち世界中に配信された。『華麗なるギャツビー(The Great Gatsby)』に主演するキャリー・マリガン(Carey Mulligan)をはじめ、ほかの女優陣が何を着るのか、まさに世界中が注目している。

 しかし、デザイナーの中には、そのスター選びにポリシーを持つ者もいる。「エリー・サーブ(Elie Saab)」のドレスは授賞式でもよく着用されているが、ブランド側から動くことはない。「私たちからセレブに連絡することはありません。まず、彼女たちがエリー・サーブを着たいと思ってくれなければなりません」と同ブランドのEmilie Legendreは語る。昨年は、中国人女優のファン・ビンビン(Fan Bingbing)と仏女優のヴィルジニー・ルドワイヤン(Virginie Ledoyen)が着用した。今年はロサンゼルスやロンドン、パリでより多くのセレブたちのフィッティングを行ったという。

■若手デザイナーにも大きなチャンス

 映画『アメリ(Amelie)』で世界的に有名になったトトゥは、今年の映画祭の司会を務める。15日のオープニングセレモニーでは、フランスの若手デザイナー、イーキン・イン(Yiqing Yin)が400時間をかけて制作したというミントカラーのシフォンドレスを着用した。トトゥが着てくれたことを「特別なプレゼント」だと言うイーキン・インは、それが「ユニークな露出」になったと語る。「若手デザイナーのドレスを選ぶという挑戦をする女優は少なく、みんなビッグメゾンを着るのです」

 ベルギー出身の若手デザイナー、セドリック・シャルリエ(Cedric Charlier)は、ミア・ハンセン=ラブ(Mia Hansen-Love)監督、女優のマリーヌ・バクト(Marine Vacth)とナタリア・アセベド(Nathalia Acevedo)にドレスを提供した。しかし、フィッティングから実際のレッドカーペットまでには、何が起こるかわからない。「彼女たちは最後の一瞬で考えを変えることもできる」とセドリック・シャルリエの関係者は語る。そのため、デザイナーの中には実際に登場するまで、誰がドレスを着る予定か明かさない者もいる。

■最後の最後でドレス変更も

 「2年前、サラ・ジェシカ・パーカー(Sarah Jessica Parker)がいくつかのドレスを用意していて、最後に我々のものを選びました」と明かすのはエリー・サーブのLegendre。世界中の新聞やテレビにエリー・サーブを着た彼女の写真が流れた。

 カンヌのホテル・マルティネス(Hotel Martinez)のスイートルームにはエリー・サーブのショールームがあり、レッドカーペットに向けスタンバイされたドレス約60着が揃っている。「我々は貸し出すドレスが同じスタイル、同じ色でないか最善の注意を払っています。時々、例えば、あるセレブが他のブランドから借りたドレスが合わないときなどは、直前にお貸し出しすることもあります」とLegendre。このショールームはつまり、最後の最後でもドレスの変更が可能だということを意味している。

 12日間にわたって開催されるカンヌ映画祭はデザイナーにとって、一夜限りのアカデミー賞授賞式よりもスポットライトを浴びる良い機会だ。Legendreはカンヌ映画祭が「広告出稿するよりも良い」という。「顧客は、モデルが着るよりも女優が着ている方が認識してくれますから」
(c)AFP/Caroline TAIX