【12月28日 AFP】パリのトップブランドである「クリスチャン ディオール(Christian Dior)」、「サンローラン(SAINT LAURENT)」、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」がそれぞれに新しいデザイナーを迎えた2012年。彼らが、ファッション業界だけでなく、世の中の人たちの興味関心を惹き、2013年も売上を維持していく良い方法はあるのだろうか。

―変化が必要とされるファッション業界

「ブランドは自らを一新するタイミングに来ている」と言うのはラグジュアリー・ビジネス専門家でパリ政治学院(Sciences Po)教授のセルジュ・カレイラ(Serge Carreira)氏。“変化”は、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)が差別的な発言を理由に解雇され、ラフ・シモンズ(Raf Simons)が就任した「ディオール」のように意図的でないものもあれば、ステファノ・ピラーティ(Stefano Pilati)に代わってエディ・スリマン(Hedi Slimane)を起用した「サンロラーン」、ニコラ・ゲスキエール(Nicolas Ghesquiere)に代わってアレキサンダー・ワン(Alexander Wang)を起用した「バレンシアガ」のように計画的なものもある。ブランドにとって「新デザイナーの起用は消費者を刺激する新しい方法だ」とファッションコンサルタントのジャン・ジャック・ピカール(Jean-Jacques Picart)氏は語る。

 ファッション界において1年間でこれほどの変化があることは、2000年代初頭にエディ・スリマンが「ディオール・オム(Dior Homme)」、トム・フォード(Tom Ford)が「サンローラン」に就任した時のように、ひとつのサイクルの終わりと新たな始まりを意味している。ゲスキエールとガリアーノは15年間、ピラーティは12年間にわたり前任のブランドに属していたが、それは「ファッション産業にとってもデザイナーにとっても、十分なほど長い年月だ」とフランス・パリにある装飾美術館(Arts Decoratifs museum)のパメラ・ゴルビン(Pamela Golbin)キュレーターは言う。「1年の間に4回から8回のコレクションがあります。カプセルコレクションを含めたら12回以上です」。さらに最近のブランドは、デザイナーに“ブランドの顔”としての役割も期待している。

―デザイナーは服を売らなければならない

 ゴルビン氏(装飾美術館キュレーター)は「アーティストは夢を見させる存在だが、ファッションデザイナーは服を売らなければならない。それができなければビジネスとして成立しない」と故デザイナー、マドレーヌ・ヴィオネ(Madeleine Vionnet)の言葉を引用する。「今日のファッションデザイナーは、ドレスがデザインできるだけでは不十分です。強い個性と特徴のあるプロダクトが成功の鍵です」と言うのはカレイラ氏(パリ政治学院教授)。将来成長を見込むためには、ブランドはクリエイティビティとビジネスの間でバランスを取っていかなければならない。「思い切ることが有益であるということは、歴史が示しています。才能あるクリエイターに標準的なプロダクトのデザインを頼んでもうまくいくはずがありません」と続ける。この15年間で消費者も変化した。ファッション業界は今、90年代のファッション初心者とは全く異なる流行の最先端を行く消費者に向いている。現代の消費者は、有名ブランドとニッチなブランドの間をさまよい、多かれ少なかれ高額なものにも賢く消費する。

―この春、新しい時代のはじまり

 エディ・スリマンは10月のファッションショーで、故イブ・サンローランにオマージュを捧げた13年春夏コレクションを発表したが、この春にはより“リアル”なファースト・コレクションが披露される。シモンズは既にオートクチュールとプレタポルテにおいて、「ディオール」のアイコニックなシルエットをクリーンかつモダンに再現したコレクションを見せている。

 ニューヨークの人気デザイナーであり、自身の名前を冠したブランド「アレキサンダー ワン」でアジアを中心に成功を収めているワンは、この春13/14年秋冬コレクションで「バレンシアガ」で最初の一歩を踏み出す。「バレンシアガ」がどんな方向性を示そうとも、ピカール氏(ファッションコンサルタント)曰く、ワンの就任はファッションの都、パリへの「新世代の到来」を示しているようだ。(c)AFP/Dominique Ageorges