スズキタカユキ(suzukitakayuki)2002/03年秋冬コレクションより。バサラが買い付けたスカート。(c)suzukitakayuki
【東京 20日 MODE PRESS】東京・代官山のセレクトショップ「エース(A)」が7月29日で閉店する。エースの前身「ジプシー」と「バサラ」、さらに原宿にあった「エース」の時代から、多くの人に刺激と影響を与えてきたショップだった。
■登竜門的ショップ
新人デザイナーの服は、数シーズン様子を見てから買い付けるバイヤーが多い。しかし、秋枝さんはデビューコレクションを積極的に買い付けた。「デザイナーが温めてきたものを見せるのがファーストコレクション。そのパワーに惹かれた」と秋枝さん。しかも売りやすいコマーシャルラインではなく、ショーピースを買うことが多かった。
デビュー間もない頃、ジプシーで取り扱いがあったヤブ・ヤム(YAB-YUM)のデザイナー、パトリック・ライアン(Patrick Ryan)は「素直に面白いと思うものを応援してくれた。ここから有名になったデザイナーは多い」と言う。
今は東京コレクションに参加しているデザイナーのスズキタカユキ(suzuki takayuki)もその1人。まだ「作品」として作っていた服をバサラが買ってくれた。「店に置いてくれたおかげで、いろんな人に名前を知ってもらえた。バサラがなかったら、今も服作りを続けていたかわからない」。若手デザイナーにとって、バサラとジプシーは、登竜門のようなものだったのだ。
■ファッション好きが集まる場所
ショップは、磯部さんと秋枝さんに共感して集まる人々によるサロン的な空間でもあった。原宿エース時代から通っていたナノ・ユニバースの企画、大原寛之さんは「ファッション=自由を教わった店。服以外にも面白いことが聞けた」と、2人の魅力を語る。
吉村さんは「同時多発的にエッジなクリエイターが出てきてシンクロしていた。面白いものをいつも見せてもらえた」と語る。
海外からデザイナーを呼んでのエキシビションや、パーティーも開かれた。そこでクリエイター同士が知り合い、新たな作品が生まれた。
■貫き通したスタイル
ジプシーとバサラを統合してエースとなったのは2004年。ファッション業界のキーワードは「ラグジュアリー」や「セレブ」になっていた。ハイブランドか、ユニクロ(UNIQLO)やザラ(Zara)のようなロープライスショップか、消費傾向が二極化した今は、クリエーションを重視するデザイナーやショップには厳しい時代だ。売上げのために品揃えの方向性を変えるのは簡単だが、2人が選んだのは閉店だった。秋枝さんは「バサラのようなデザイナーの時代は終わったと、自分でも思う」と語った。
伏見さんは「勇気ある美しい終わらせ方。寂しいけど、売るための仕事はしないという考えは理解できる」と話す。
「自分にとって偉大な存在だったから、なくなるとどうなるのか、怖い部分もある」と語るのはテッペイさん。閉店セールでオリヴィエ・ティスケンス(Olivier Theyskens)やオスカー・スレイマン(Oscar Suleyman)などの初期作品をいくつも買った。「スタイリストとして持っておくべき、と思う服。お店がなくなるなら、自分が保存しようと思った」。
磯部さんと秋枝さんの今後は未定。新しい計画もあるが、まだ構想段階だという。(c)MODE PRESS/Yoko Era<arex>


