【11月4日 AFP】スポットライトに浮かぶモデルがまとっているのは、生ダコのチュニックに海草のミニスカート、チョコレートのドレス――。レストラン・ガイドブック『ミシュランガイド(Michelin Guide)』の星を獲得した有名シェフと写真家がコンビを組んだ、オートクチュールと美食の共演といえる展覧会が、独ベルリン(Berlin)の博物館で開催されている。

 ベルリンの通信博物館で来年1月29日まで開催中の「ファッション・フード展(Fashion Food)」では、オーストリア人シェフのローランド・トレットル(Roland Trettl)氏と、同じくオーストリア人の写真家ヘルゲ・キルヒベルガー(Helge Kirchberger)氏による豪華な写真50点を展示。目で楽しむ喜びと舌で味わう喜びの境目をかすませつつ、「グルメ」やきらびやかなファッション哲学、消費という概念や、豊かな社会の持続性などを批判的に解体してみせている。
 
 モデル2人が登場しての展覧会オープニング後、AFPのインタビューに応じた同博物館のリーゼロッテ・クグラー(Lieselotte Kugler)ディレクターは「わいせつ、ポルノ的な映像ではないがエロティシズムをかきたてる、一石を投じる作品群だ」と解説した。

「食物への賛美でもある。ドイツでは毎年、パンだけでも5000トンに上るほど大量の食物が捨てられている事実を考えれば、『食』といかに付き合うべきか、わたしたちの社会で『食』がいかに工業化されているかについて、誰もが考える必要がある」(クグラー氏)

■栄養バランスにも配慮、V.ウェストウッドも感嘆

 米歌手レディー・ガガ(Lady Gaga)は前年、薄く切った牛肉を全身にまとって授賞式に現れ物議をかもしたが、ベルリンの展覧会の作品はもっと「栄養バランス」が取れている。

 例えば『ロシア風ベーコン』という作品は、赤身のベーコンを縫い合わせたトラウザー・スーツ姿のモデルが、イカ墨パスタでできたデリケートな黒いスカーフを巻き、色鮮やかなフリルレタスと赤唐辛子、ダイコンで作った飾り帽子を頭に頂いている。別の作品の男性モデルは、レタスのパンツに、サーモンのタンクトップという装いだ。

 また、脂肪の多い子牛の胃膜を網状にしてエレガントなヘッドスカーフに仕立て、対照的にボリューム感のあるうずらの卵のネックレスとあわせた作品では、モデルはイカ墨で染めたセクシーなボディスーツをまとい、頭は砂糖をパールに見立てたアクセサリーで飾られている。

 撮影で使われた食材についてクグラー氏は、「ただ捨てたりはしなかった。タコは柔らかくなるまで3、4時間ゆで、パスタもゆでた。そうして最後にみんなで座り、パーティーとなった」と語った。

 トレットル氏とキルヒベルガー氏は、撮影した写真をレシピ付きの写真集にして出版している。序文を寄せたのはファッション界の「反逆児」、英デザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)。2人の作品を、野菜や果物をモチーフにした16世紀のイタリアの画家、ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo)の肖像画になぞらえつつ、「わたしもいつかやってみたい。準備は誰かにしてほしいけれど」と記している。(c)AFP/Deborah Cole

【動画】生肉だけじゃない!こんなものまでファッションに(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)