【10月8日 AFP】デザイナーとしてでなく写真家としても世界的な活躍をみせるカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が、パリのヨーロッパ写真美術館(Maison Europeenne de la Photographie)で10月末まで展覧会「Karl Lagerfeld, parcours de travail」を開催している。

■カメラを手にしたきっかけは…

 1980年代に「シャネル(CHANEL)」のデザイナーに就任したカールがカメラを手にしたのはある出来事がきっかけだった。「1987年のあるシーズンにシャネルのイメージ・ディレクターが私に宣伝用資料を1度、2度と見せてきて――そして3度目のときに彼はこう言ったんだ。『それほど厳しいんだったら、どうして自分で撮影しないんだ?』ってね」とカールは語る。「その当時もコレクション用のプレスフォトが存在したが、まるで初心者か時代遅れの人物が撮影したようなひどい仕上がりだった」。

 こうして写真との関係はスタートした。「最初は、携帯電話でスナップ写真を撮影する現代の人みたいな、まったくの初心者だったよ」とカール。

■約400点の作品が一堂に

 会場には世界中で撮影された約400点の作品が展示される。「ほとんどの作品はベーシックで小さなカメラで撮影したもの。常に持ち運ぶことができるからね」とカール。ニューヨークの都市景観、半抽象的なランドスケープ、ベルサイユ宮殿(Chateau of Versailles)、ローマの吹雪。ファッション写真や広告作品、著名人のポートレートなど、作風は様々だ。「写真は私のビジョンを広げてくれたように感じる。より物事がクリアに見えるようになった」

 また「広告や編集の仕事に取り組むことで、ファッション、写真、そして全てのアートが絶えず周りに満ち溢れるようになった」という。

■現像のテクニックを追求

 現像技法についても研究を重ねた。「私は、さまざまな現像技法に興味と情熱を持っている。今現在可能な技術や、もはや不可能な技術。それは私にとって、写真そのものと同じぐらい重要な要素だ」とカール。

 ある作品では「恐ろしいほど難しい」という、19世紀の写真技法レジノタイプ(Resinotype)を現代に蘇らせた。また、別の作品では日本製の粒子の細かいアイシャドウを使い、自分でペイントを施した。「とても気に入っているよ。ミリ単位のとても細かな作業だから、なかなか骨が折れるけどね」と語るが、その姿はとても満足気だ。

■画像の修正に苦言

 赤いTシャツが印象的な俳優のジャック・ニコルソン(Jack Nicholson)のポートレートを指しながら「修正したかのように思うかもしれないけど、これは太陽の強い光によって映し出された本当の色なんだよ」とカールは語る。

 現在のファッション業界では、画像処理ソフト「フォトショップ(Photoshop)」などで写真データを修整することが一般的になっているが、カールはその現状に批判的だ。

 ある日モデルのクラウディア・シファー(Claudia Schiffer)が某写真家について「誰かの腕を撮影して、その後に他の人の頭を撮影するの。私の目の下にはくまがあってキレイじゃなかったけど、最終的にはゴージャスに仕上がったわ」とカールに打ち明けたことがあった。「酷い状態からスタートし、それを素晴らしいものに仕上げると、結局どれもが同じに見えてしまう」
  
■ファッションと写真

 現在は「シャネル」「フェンディ(FENDI)」「カール ラガーフェルド」でのデザイナー活動に並行し、写真家として精力的に活動している。デザイナーとしての仕事はコレクションシーズンが終わると休暇に入るが「その間の空白を写真家としての活動で埋めることができる」とカール。「デザイナーと写真家、どちらの活動も互いに刺激を与え合い成長していける。過食症みたいにどんどん栄養を与え合っているみたいだ」

 クリエイションは多岐にわたるが「どのジャンルの作品にも共通のスピリットを持って取り組みたい」と語る。「だけど、すべての作品を同じ表現で終わらせたくない。それはすごく退屈に違いないからね」(c)AFP/Emma Charlton

【関連情報】
カール・ラガーフェルド、仏レジオン・ドヌール勲章を受勲
カール・ラガーフェルド新作写真集『Metamorphoses of an American』刊行
カール・ラガーフェルド、「アウディR8」をモデルに写真展を開催
写真見本市「パリ・フォト2007」にカール・ラガーフェルド出展
◆【カール・ラガーフェルド】過去記事一覧