【12月5日 MODE PRESS】ダンヒルの創業者アルフレッド・ダンヒルは、1880年代から父の経営する馬具専門卸売業者で働き始め、1893年に若干21歳で家業を受け継ぎ、自からの名を冠した会社を設立した。

 時代の流れを読む力に長けていたアルフレッドは、新たに登場した自動車が、当時交通の主流であった馬車に取って代わることを予測。自動車を愛する人のためのアクセサリーや小物を販売するというアイデアをひらめき、「エンジン以外のものすべて」をモットーに、車のヘッドライトやホーン、レザーのコートやラゲージ、毛皮のグローブなどを製作した。

 1907年には、初のブティックをロンドンのジャーミン・ストリートにオープン。遊び心あるアイデアにあふれた製品はたちまちドライバーたちの評判となり、ダンヒルの名を広く知らしめた。

 ブランドの成長とともに、ドライバー用の小物以外にも、時計やレザーグッズ、ライターなど幅広い品揃えを展開した。一人ひとりに合わせてブレンドする刻み煙草や、「オープンカーを運転しながらでも吸える」風除け付きパイプなど、顧客の声に耳を傾けた結果誕生したヒット商品も多い。

 第一次世界大戦後には、ダンヒルの評判は海を越え米国に届き、1923年に初の海外店舗をニューヨーク五番街にオープン。

 第二次世界大戦によってロンドンの街全体が大きな被害をうけた翌日にも、アルフレッドは瓦礫の間で「ダンヒルのご案内を受け賜ります」という看板を立て、店の営業を行った。何よりも顧客を重んじ、最高のサービスを提供するよう心掛けたアルフレッドらしいエピソードである。

 現在では、メンズウェアから、レザーグッズ、ウォッチ、メンズアクセサリーまで、トータルなラインナップを取り揃えるダンヒル。その全ての商品には、創立時から貫かれている「製品が持つべき実用性」と「こだわりを持つ楽しみ」という信念が息づいている。(c)MODE PRESS