【1月3日 AFP】「世界で一番の親友がユダヤ人であることを、本気で誇りに思ってるのよ」――パレスチナ系カナダ人のエマン・フセイニ(Eman Husseini)さんは、ヨルダンのアンマン(Amman)で開催された「お笑いフェスティバル」で、上機嫌の観客に語りかけた。このようなフェスティバルが開催されるのは、中東ではまだ2度目だという。

「幼なじみなの。(わたしたちの行動は)とてもかわいらしいものだったわ。カウボーイとインディアンごっこをする代わりに、イスラエル人対パレスチナ人ごっこをやっていたのよ。彼女は私の家にやってきて、私を家から強制退去させるの」(エマン・フセイニさん)

 政治的緊張と保守的な社会、宗教的道徳観で知られる中東に、ユーモアを持ち込むこと――これがフセイニさんとその仲間たちの「ミッション」だ。仲間は、米国やカナダ、欧州など外国に暮らすアラブ系のコメディアンたち。フセイニさんたちは対立や固定観念に尻込みしない。尻込みする代わりに、ひねりを加えて笑いを生み出すのだ。

 パレスチナ系とイタリア系を親に持つ米国人のディーン・オベイダッラー(Dean Obeidallah)さんは、「ステージに立ってジョークを飛ばすスタンドアップコメディーは、アラブ世界では新しい現象なんだ」と語る。「(アラブ系の人々にとっては)自分たちの文化について、あんなジョークを聞くのは初めて。彼らの前に鏡を差し出した人はこれまで誰もいなかったのさ」

 オベイダッラーさんたちのグループ名は挑発的にも「悪の枢軸(Axis of Evil)」という。もちろん、米国の前政権が「ならず者国家」を名指すために用いた「悪の枢軸」を無断で借用したものだ。

■9.11以後の米国社会の冷たい風当たりから誕生

 9.11米同時多発テロから2年後の2003年、多くのアラブ系米国人コメディアンが、自分に向けられた疑惑を晴らそうとし、あからさまな差別とも闘っていた。

 そういった情勢の中、オベイダッラーさんはパレスチナ系米国人コメディアンのマイスーン・ザイード(Maysoon Zayid)さんとともに「ニューヨーク・アラブ系米国人コメディーフェスティバル(New York Arab-American Comedy Festival)」を共同設立。グループの目的は、才能あるアラブ人を紹介することと、同時多発テロに毒されてしまった社会の解毒剤となること。フェスティバルは人気を博し、以後毎年開催されている。

 08年12月には、この企画をヨルダンでも行った。アンマン当局者によれば、中東では初めての試みだったが成功を収め、市当局者も毎年恒例のイベントにしたいと考えているという。

「われわれは笑いの宣教師」のオベイダッラーさんは語る。次の目標は、アラブの若者たちが活躍できるようワークショップを開催することだという。(c)AFP/Ahmad Khatib