【7月15日 AFP】J・K・ローリング (J.K. Rowling)さんの『ハリー・ポッター(Harry Potter)』最新作は、出版界で究極の成功を収めたシリーズの最終章となる。しかし、ハリポタブランドがすぐに消えてしまうことはなさそうだ。

 映画版の公開によって、今や世界的な現象となった少年魔法使いの冒険物語に親しむ人は増えるばかり。マニアは少々変わった場所でも拡大し、時に思わぬ波紋ももたらしている。

 ハリー・ポッターシリーズはキューバのグアンタナモ(Guantanamo)米海軍基地の収容施設で1番人気の本となった。またローマ法王ベネディクト16世(Pope Benedict XVI)の怒りを買ったとも報じられた。英国では切手シリーズが発行され、米フロリダ州には2009年にテーマパークがオープンする。

 ファンは同書が生まれた英国で真っ先に映画を観たり最新作を読むために、はるばる数千キロも旅したり、雨や直射日光の中で何時間も待つことさえいとわない。

 しかしこのシリーズの成功は、最初から予想されていたわけではなかった。

 当時新進作家だったローリングさんは2度目の挑戦で1995年に著作権代理業者を見つけ、その後10数人の編集者にあたって断られ続けた末、1年たってようやくブルームズベリー(Bloomsbury)からの出版が決まった。

 英語で出版された『ハリー・ポッターと賢者の石(Harry Potter and the Philosopher's Stone)』の初版本発行部数はわずか1000部。ローリングさんが手にしたのは1500ポンド(約37万円)にすぎなかった。

 今ではローリングさんの資産は10億ドル(約1200億円)相当に上ると言われ、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)をもしのぐ富豪になった。初版本はコレクターズアイテムとして、相当の高値が付いている。

 米国では1997年初め、出版社のスカラスティック(Scholastic)が対抗する数社を抑え、米国でのシリーズ出版権を10万ドル(約1200万円)で競り落とした。

 今や時代は変わった。7月21日に発売される最終巻の第7巻『Harry Potter and the Deathly Hallows(ハリー・ポッターと死の秘宝<仮題>)』で、スカラスティックは過去最高の1200万部を印刷した。

 1997年の初版本発行以来、これまでに出版された6巻は64言語で3億2500万部が売れ、最終巻で4億部を突破する見通しだ。

 付随する映画によってハリポタマニアは増えるばかり。ローリングさんの著作映画化の権利はワーナー・ブラザース(Warner Bros)が取得、初回作は比較的少額の1億2500万ドル(約150億円)で製作され、9億7600万ドル(約1190億円)の興行収入を上げた。これまでに公開された4本の興行収入は総額35億ドル(約4300億円)。

 映画5作目『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(Harry Potter and the Order of the Phoenix)』は11日に全米で公開され、米国で週の半ばに公開された映画としては、過去最高の興行記録を達成した。

 ポッターの影響は従来のメディア以外でも広がっている。インターネットで「ハリー・ポッター」を検索して表示される結果は、2005年末の時点で840万件だったが、現在では1億100万件のウェブサイトがヒットする。

 辞書や百科事典もインターネット版と印刷版の両方で取り上げ、主要登場人物をテーマにしたウェブサイトやインターネットフォーラム、掲示板も続出した。

 ファンは1990年7月31日のハリー・ポッターの誕生日を祝うイベントも開いている。この日はローリングさんの25歳の誕生日でもあった。

 しかし最も特筆すべき成功は、子どもから大人まで幅広い層を魅了したという点だろう。小説はそれぞれ子ども用と大人用の2種類の表紙で出版されるまでになっている。

 一方、小説の中の暴力性を批判して、ハリーを悪魔呼ばわりする声もある。ローリングさんは昨年、「ハリー・ポッター小説は今年またしても、最も禁止された本の仲間入りをしました」と紹介した。

 これに対して支持者は、同書によって数百万もの子どもたちが小説に親しむようになったと擁護している。(c)AFP/Elodie Mazein