【6月9日 AFP】わずか3日で刑務所を出所し、自宅軟禁となっていたパリス・ヒルトン(Paris Hilton)受刑者に対し、再収監の決定が下された。しかし、いったんは釈放されたことに対し、裕福で有名なセレブに対する特別待遇だとする批判が噴出した。

 ヒルトン受刑者は免許停止処分中の運転で逮捕され、ロサンゼルス郡の女性専用の刑務所に収監されていたが、45日間の禁固刑に対し、わずか3日で釈放。「健康上の理由」から、足首に電子タグをつけた状態で、自宅軟禁とする、という決定に強い批判が沸き起こっていた。

■再収監の決定に涙を見せたヒルトン受刑者

 8日、ロサンゼルス地裁で行われた審問に時間通りに出廷せず、電話での話し合いを求めていたヒルトン受刑者は、自宅まで迎えにきた警察に連行されていった。その際、母親に抱きついて涙を流していたとされるヒルトン受刑者は、手錠をかけられ警察車両に乗り込んだ。

 上空を飛んでいたヘリコプターから撮られた映像には、すすり泣くヒルトン受刑者と、同受刑者を乗せた警察車両が報道陣の中を走り抜ける様子が映し出されていた。その後、連行されたロサンゼルス州地裁で、ヒルトン受刑者はMichael Sauer判事に刑期を終えるよう命じられた。

 塀の中でわずか72時間足らずを過ごしただけだったヒルトン受刑者は、再収監の決定が下された際、「ママ!」とすすり泣いたという。

■両親も傍聴

 ヒルトン受刑者の両親は、審問の様子を見守っていた。判事が再収監の決定を下したとき、母親のキャシー(Kathy Hilton)さんは、夫のリック(Rick Hilton)さんと抱き合い、「何てことなの!」と言い涙した。

■セレブの実刑に報道も過熱

 取り乱したヒルトン受刑者の様子は、豪華なドレスに身を包み、レッドカーペットに登場するセレブとはまるで別人だった。刑務所に入所する前日に、ヒルトン受刑者はMTV・ムービー・アワード2007(2007 MTV Movie Awards)の授賞式に出席し、報道陣の前に元気な姿を現していたのだ。

 今回のヒルトン受刑者に関する一連の出来事に対し、メディアの反応も加熱している。

 ヒルトン財閥の遺産相続人として有名なヒルトン受刑者は、世界で最もカメラマンの的になっている女性の1人で、ハリウッドのパーティーシーンには欠かせないセレブとなっている。そんなヒルトン受刑者を一躍有名にしたのは、インターネット上に流出した当時のボーイフレンドとのセックス映像だろう。

 その後、リアリティ番組『The Simple Life』に出演し、歌手デビューを果たし、『蝋人形の館(House of Wax)』や『Pledge This!』などの映画にも出演。新作『The Hottie and the Nottie』も今後公開予定となっている。

■釈放決定へのさまざまな声

 今回の釈放に対しては、強い批判が巻き起こった。同受刑者を刑務所に戻し、刑期を終えさせるべきだとする抗議行動が起こり、さらに、ヒルトン受刑者に対する特別待遇だと抗議する市民から、膨大な数の怒りの電話やメール、ファックスなどが殺到した。

「この決定は、経済力や権力に関係なく、いかなる市民も、法の下に平等だということを伝えるものです」8日の再収監の決定のあと、ロサンゼルス市のRocky Delgadillo弁護士はこのような声明を出した。

 一方、ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)紙のインタビューを受けたロサンゼルスのリー・バカ(Lee Baca)郡保安官は、7日に下されたヒルトン受刑者の釈放決定を擁護していた。

「一般のアメリカ市民以上にセレブを罰するのは不公平だと、セレブを嫌う人々に伝えたい」

「問題は、健康上の理由があったということです。問題を抱えたまま、刑務所で刑期を過ごさせ、その問題をさらに悪化させるのは賢明ではないということです」

 しかし、Delgadillo弁護士によれば、ロサンゼルス市内の拘置所は受刑者のための医療設備も整っており、釈放するという決定は「不可解」なものだと語った。

「法を執行する人間が、保護すべき人々からの尊敬を受けるのであれば、裕福で権力を有する人々が特別扱いを受けるような二層の刑務所制度を許すわけにはいきません」(c)AFP/Tangi Quemener