【9月18日 AFP】2008年に有害物質メラミンに汚染された粉ミルクで乳幼児6人が死亡、30万人以上が健康被害を受ける事件があった中国の乳業メーカーの間で、企業イメージ向上のためフランスなどの企業と提携する動きが活発になっている。

 広州(Guangzhou)に拠点を置き、香港(Hong Kong)市場に株式を上場している粉ミルクメーカーの合生元(Biostime)は、自社製品の安全性を示すため、フランスのレトリ・ドゥ・モンテギュ(Laiterie de Montaigu)、イジニー・サントメール(Isigny Saint-Mere)乳業組合、デンマークのアーラフーズ(Arla Foods)との合弁事業に乗り出した。

■フランスの新工場計画に26億円の出資

 最も野心的なのがイジニーとの合弁だ。合生元はノルマンディー(Normandy)地方の新工場建設プロジェクトに2000万ユーロ(約26億円)を出資する。総額5000万ユーロ(約66億円)の同プロジェクトはイジニーの粉ミルク生産量を2倍以上に押し上げる見込みだ。イジニー側は生産量の3分の2を中国向けに確保するとともに、取締役の15人のうち1人を合生元から迎える。

 ヨープレイ(Yoplait)やアントルモン(Entremont)などのブランドを擁するフランスの酪農組合ソディアール(Sodiaal)は、中国で自社ブランドCandiaの製品販売を開始し、仏国内では中国第4位の乳児用粉ミルクメーカー「聖元(Synutra)」と合弁企業を立ち上げる二重の戦略を採用。この合弁の中心事業は粉ミルクで、聖元は株式の90%を保有する。生産の全量を中国に輸出する計画だ。

 北京(Beijing)の西側外交筋は、中国企業は乳製品だけでなく豚肉製品や大豆などでもブランドや技術を取得することで「国際的な悪評を克服」しようとしていると述べた。

■フランス産食品の評判や取引の永続性に懸念も

 専門家は、フランス産食品が中国に入った後に汚染されるようなことがあれば、フランス産食品の評判が損なわれる恐れがあると指摘。フランスの酪農家が新たな投資家から財政的な圧力を受ける恐れもあると警告している。

 フランスに投資するより資金が少なくて済む選択肢が見つかれば、中国企業はフランスを見捨てる可能性があると懸念する声もある。ソディアールのある酪農家は「国際価格が1トン当たり320ユーロ(約4万2000円)より下がれば、中国企業がその価格で粉ミルクを購入するとはあまり想像できない」と言う。

 また、10年間に及ぶ提携を結べば、中国市場への製品供給のために酪農家は増産することになるだろうが、「もしも10年後に相手が立ち去ったらどうなるんだ」と不安を口にした。

 一方、フランスのギヨーム・ガロ(Guillaume Garot)農産食品業担当相はAFPに、中国からの投資を受けたことでフランスがリスクを抱えたとの考えを否定し、「フランスの品質に対する評判を上げ、雇用を創出する投資を一体どのような理由で拒否すべきだろうか」「われわれは商業上の取り組みと産業における協力関係を強化しなければならない」と述べた。(c)AFP/Sandra LAFFONT