【6月12日 AFP】債務危機に苦しむギリシャ政府は11日、国営ラジオ・テレビ「ERT」を直ちに閉鎖すると発表した。この決定により2700人近くの職員が影響を受けることになり、国内には衝撃が広がっている。

 政府報道官は記者会見で、「ERTは透明性の著しい欠如と、信じられないほどの浪費の一例だ」と述べ、放送は現在より大幅に少ない人員で再開する予定だと明らかにした。

 ERTの職員らは数か月にわたり、ギリシャに金融支援を行う欧州連合(EU)、国際通貨基金(International Monetary FundIMF)、欧州中央銀行(European Central BankECB)が要求するERTの構造改革に抗議し、ストライキを続けていた。

 閉鎖の発表を受け、首都アテネ(Athens)北郊のERT本局前には、同局への支持を表明しようと数千人が集まった。

■送信施設のある山に警察が

 ERTは発表後も放送を続けていたが、国営アテネ通信(Athens News Agency)によると、放送は午後10時(日本時間12日午前4時)からギリシャ各地で徐々に停止し始め、午後11時(日本時間12日午前5時)すぎに全土で完全に途絶えた。ERTで30年間働いてきたという技術者の男性は、警察が山に登ってきて送信施設を管理する人員を制圧したと述べた。

 財務省は放送停止に合わせ、ERTの組織は廃止されたと発表。ギリシャ最大の民間労組、労働総同盟(GSEE)は「ERTは唯一の独立した公共放送局。われわれは政府の突然の決定を非難する」との声明を出した。

 政府は、現職員の全員に補償を行うとともに、新たな組織での再就職の機会を与えると述べている。(c)AFP/Katerina Voussoura