【5月22日 AFP】米アップル(Apple)のティム・クック(Tim Cook)最高経営責任者(CEO)は21日、米上院の国土安全保障・政府問題委員会常設調査小委員会の公聴会に出席し、「偽装した子会社と複雑な戦略によって利益を国外に移転していた」との疑いを強く否定した。「課税逃れを画策したことはない」として、アップルは納税以上の責任を果たしていると強調した。

 一方、委員会に出席した議員たちの一部は、同社が海外子会社のネットワークを利用して課税を逃れており、子会社の中にはいずれの国でも課税されていないものがあると指摘されている点について怒りをあらわにした。

 小委員会の委員長を務めるミシガン(Michigan)州選出のカール・レビン(Carl Levin)上院議員(民主党)は、クックCEOとその他の幹部は否定しているものの、アップルが資産を移転するパターンは、委員会の調査ですでに特定されていると主張。「(同委員会の)報告書から、アップルが利益を海外に設立した『偽装され、親会社の手段にすぎない』団体に移転したことは明らかだ」と述べ、アップルがその保有する最も価値の高いもの、つまり知的所有権を移転している点を批判した。

 さらに同議員は、アップルが「最優良資産」である知的財産を同社の管轄下にあるアイルランド子会社の3社に譲渡したことに言及。アップルの世界各国での事業の利益の大半がこれらの子会社に移転されている点も問題視した。「アップルが持つ利益の約70%が、最終的にはアイルランドの子会社に移転されている」という。

 また、同委員会のジョン・マケイン(John McCain)上院議員(共和党)も、「アップルが複雑かつ悪質な戦略を用い、米国における課税の一部だけでなく、世界各国でも課税逃れをしていたことは全く言語道断だ」として、同様の見解を示した。

 こうした批判に対してクックCEOは、「この問題は複雑で誤解を招く場合もある」としつつ、アップルは米国で利益の30.5%を納税していると主張。「国外では米国よりも低い課税率が適用されているが、それは国外での製品の売り上げにかけられている税率だ」と述べた。

 同CEOは、「当社が米経済に貢献していることを誇りに思う。我が社は業務を行うどの国でも、法律と納税義務を順守している」として、ダミー会社を使っているとの批判をはねつけた。

 公聴会に出席したピーター・オッペンハイマー(Peter Oppenheimer)最高財務責任者(CFO)もまた、アイルランド子会社がほとんど、または全く納税をしていない点については認める一方で、「収入を得た国の政府から課税されている」と強調した。

 このほか、クックCEOはアップルが巨額の資金を海外に保有していることについて認める一方で、米国の正規の法人税率が35%であることが、本国に資産を戻さない要因になっていると指摘した。法人税率を引き下げ、抜け穴をふさぐためため、法人税法を大幅に簡素化する必要があることは明らかだという。「それがアップルにとって税額の増加を意味するとしても、米国へのスムーズな資金の環流を可能にする合理的な税率を支持する」との考えだ。(c)AFP/Rob Lever