【4月24日 AFP】もしも米小売大手ウォルマート(Walmart)や格安航空会社のように、病院が運営されたらどうなるだろう?余分なサービスを一切省いたインド南部の大手病院チェーン「ナラヤナ・フルダヤラヤ(Narayana Hrudayalaya)」がそれに近いかもしれない。

 プレハブ建築を使い、エアコンをなくし、さらに見舞いに訪れる人たちに患者の術後の世話を訓練することで、心臓手術の費用を800ドル(約7万9500円)にまで抑えられるとナラヤナ・フルダヤラヤ病院では考えている。

 創設者のデビ・シェティ(Devi Shetty)氏は世界的にも有名な心臓外科医で、マザー・テレサ(Mother Teresa)の主治医を務めた経験も持つ。シェティ氏は、インドのハイテク産業の中心地・バンガロール(Bangalore)のオフィスからAFPの電話取材に応じ「現代医療は驚くべきサービスを提供している。ほぼすべての病気を治療できるし、たとえ完治できなくても、患者に意義ある人生を提供できる。しかし、こうしたサービスを受ける経済的余裕がこの地球上の何パーセントの人にあるだろうか。心臓手術が初めて行われてから100年経った今も、世界人口の10%未満の人々に限られている」と話した。

 チェーンの中でも、心臓手術の件数が世界で最も多いバンガロールの医院は「ハート・ファクトリー」としてすでに有名だが、ナラヤナ・フルダヤラヤが現在進める最新プロジェクトは超低コストの病院だ。プロジェクト第1号はバンガロールから車で2時間のマイソール(Mysore)にある1階建ての病院で、建設費は約740万ドル(約7億3100万円)、工期はわずか10か月。最近、開業した。

 ヤシの木に囲まれた施設内には心臓、腎臓、脳外科用の手術室5室があるが、先進国の何分の1かの低予算でこれだけの施設を建設する方法をシェティ氏は誇っている。「(米国の)スタンフォード(Stanford)の近くでは、200~300床規模の病院を建設中だが、建設費はおそらく6億ドル(約590億円)を超えるだろう。ロンドンにも新しい病院ができるが、建設費は10億ポンド(約1500億円)を超えそうだ。われわれの目標は建設費600万ドル(約5億9200万円)、工期は半年だ」

 さらにコスト削減の工夫が随所にみられる。エアコンは手術室と集中治療室だけに限られ、病棟は大きな窓で換気するようになっている。入院患者を見舞う親族や友人らは4時間の看護コースを受け、患者の包帯を替えるといった簡単な作業を行えるよう訓練される。一般的な病院に多い数階建ての建物は、高額の基礎工事や鉄筋強化、またエレベーターや複雑な火災安全装置を必要とするので却下した。そして建物の大半はプレハブで、現場で組み立てた。

 このマイソールの病院は、シェティ氏がインドの医療の将来について思い描く理想を象徴するもので、また発展途上国医療の低コスト革命の中心地としてインドが名を馳せることが期待されるモデルだ。(c)AFP/Adam Plowright