【4月4日 AFP】1週間53ポンド(約7500円)で生活できると証明してみせて――。福祉関連予算の削減を進める英政府の閣僚にこんな要求を突き付けたオンライン署名運動が、2日間で37万人の賛同者を集めている。

 やり玉に挙がっているのは、保守党のイアン・ダンカン・スミス(Iain Duncan Smith)雇用・年金相。2日に放送された英国放送協会(BBC)のラジオ番組で、週53ポンドで暮らしているという市場の露天商の話に対し、「もしそうしなければならないなら、私もそうする」と答えた。

 これが発端で、今週から施行される与党の福祉削減策への批判が噴出。ダンカン・スミス雇用・年金相の発言を知ったあるミュージシャンがオンライン署名募集サイト「change.org」に立ち上げた、主張を実証してみせるよう要求する署名運動には、3日までに37万人が署名した。

 署名運動では、年13万4500ポンド(約1900万円)の給与を返上して、最低1年間は週53ポンドで生活するよう同相に求めている。手取りで週あたり約1581ポンド(約22万5000円)にもなる現在の収入を97%カットすることで、保守党が掲げる「We are all in this together(皆ともに頑張ろう)」の標語の意味が実感できるだろうとしている。

 これに対し、保守党党首を務めた経験もあるダンカン・スミス氏は、自らの選挙区であるロンドン北東部の地元紙に、自分も人生で2回失業した経験があり「ぎりぎりの生活」がどんなものかは良く知っていると反論。署名運動について「単に目立ちたいだけ。もっと重要で、我々が懸命に取り組んでいる福祉改革から国民の関心をそらしてしまう」と批判した。

 ちなみにダンカン・スミス氏は貴族階級の女性と結婚し、17世紀に建てられた邸宅に住んでいる。(c)AFP