【3月23日 AFP】金融危機打開に苦闘する地中海の小国キプロスで、約1週間にわたり銀行閉鎖が続く中、ガソリンスタンドや小売店、レストランなどが現金以外の支払いを受け付けなくなっており、住民たちは手元の現金がもうすぐ底を尽くと懸念している。

 金融危機からの脱出の道が見えない中、一部大型店を除き、同国の小売業者らは即時決済カード、クレジットカードや小切手での支払いを拒否している。

 首都ニコシア(Nicosia)中心部にあるレストラン経営者は「仕入先から現金だけにしてくれとプレッシャーをかけられている。だからお客様にも現金でお願いするしかない。この3日間、売り上げは7割減った。週末3日間の予約はほとんどないし、来週は店を開けるかどうか分からない」と述べた。

 ガソリンスタンド業界も同様だ。ガソリンスタンド所有者協会のステファノス・ステファノウ(Stephanos Stephanou)会長は、現金がなければ補給ができずスタンドを閉鎖する恐れもあると言う。AFP特派員によれば、まだガソリンスタンドに燃料はあるが、やはり現金支払いしかできなくなっている。あるスタンドの店長は「特にキプロス・ポピュラー(ライキ)銀行(Cyprus Popular BankLaiki Bank)のカードは受け付けない」と話した。

 同国内第2位のポピュラー銀行では、真っ先に破綻する可能性があると報じられたために取り付け騒ぎが起きている。22日にも再び同銀のATM(現金自動預払機)の前に現金をできるだけ引き出そうとする人々が長蛇の列を作った。

 現時点で各銀行は来週26日から営業を再開する予定だが、並んでいた人々は、もしも再開されなければすぐに手持ち現金がなくなってしまうと不安がっていた。

 ある男性は「260ユーロ(約3万1000円)引き出したけど、今1日に引き出せる限界はこれだけ。家にもういくらか現金があるけど、いつまで持つか分からない」と述べた。男性は家に現金を置くのも怖いと言い、「家にたくさん現金があるのは強盗を呼んでいるようなもの。今の状況をどうにかしなければキプロスでは犯罪も増えるだろう」と懸念した。

 欧州連合(EU)が100億ユーロ(約1兆2000億円)規模の金融支援の条件としてキプロスに求めている計58億ユーロ(約7200億円)の調達は週明け25日が期限となっており、もしも調達できなければ欧州中央銀行(European Central Bank)からの緊急資金援助は絶たれ、同国の銀行破綻は回避できない。

 EU関連筋はギリシャやスペイン、イタリアなど債務危機にある他のユーロ圏諸国に事態が広がらないよう、EUではすでにキプロスをユーロ圏から離脱させる用意もあると述べている。

 キプロスの閣僚らは22日も緊急閣議を開き、EUに求められている財源の調達策について遅くまで協議した。(c)AFP/Jay Deshmukh