【12月28日 AFP】環境問題に敏感な「スピード狂」には朗報だ──華やかな「イタリアンレッド」がシンボルのイタリアの高級スポーツカーメーカー、フェラーリ(Ferrari)が今、エンジンパワーを犠牲にすることなく二酸化炭素(CO2)排出量を減らした新型車の開発を進めている。

「フェラーリといえば性能だ。それを忘れることなく燃費向上を図っている」と、伊エミリアロマーニャ(Emilia Romagna)州マラネロ(Maranello)にある同社工場で、開発主任のマッテオ・ランツァベッキア(Matteo Lanzavecchia)氏はAFPの取材に語った。CO2排出量を30%削減しつつ、エンジン出力を100馬力引き上げることに成功したという。

 価格18万ユーロ(約2000万円)で販売され、フェラーリ車の中でも最も人気の高いモデルの1つ「カリフォルニア30(California 30)」。今回、最新技術を駆使して既存モデルより馬力を上げると同時に、30キログラムの軽量化を実現した。「最軽量素材を使っただけでなく、全体的に改良を施した。ブレーキの摩擦を減らし、ファン部分の改良によってエネルギー消費量を削減した」とランツァベッキア氏。

 しかし、エコ化に向けた努力はこれだけではない。マラネロ工場では鋼鉄を扱う大型機械の間に、木や植物が植えられている。湿度を調整するためだ。さらに、最新の建物には大型の張り出し窓を設け、採光量を増やして消費電力を減らした。

 向こう数か月以内に発売予定の「カリフォルニア30」ハイブリッド・モデルは、環境にやさしく、それでいて同社が自動車レース最高峰のフォーミュラワン(F1)で培った技術を味わえる点が売りとなっている。F1マシンに搭載されている運動エネルギー回生システム「KERS」を採用しており、「燃費向上とフェラーリをドライブするスリル感を合わせて提供できる」(ランツァベッキア氏)。

■不況知らずのフェラーリ、カスタマイズサービスも好調

 イタリアの自動車産業は経済危機の直撃を受けているが、フェラーリは現在のところ難を逃れている。2011年の世界販売台数は前年比10%増の7200台で、2012年の売り上げも同社史上最高の20億ユーロ(約2200億円)を達成した。

 新興市場での販売に力を入れる一方、「パーソナル・スタイリスト」や内装カスタマイズといったサービスの提供で、世界中で顧客を増やしているフェラーリ。カシミアやペッカリー、チーク材などで内装を豪華にしたり、シートやシートベルト、カーステレオやタッチスクリーンなどの装備を好みのものに変更でき、追加料金は最大で車体価格の半額ほどにも上るが、フェラーリファンの顧客には値段は問題ではないようだ。新規購入者の約98%が、内装のカスタマイズを注文するという。(c)AFP/Ljubomir Milasin