【10月29日 AFP】フランスの小さなベンチャー企業が、錬金術に着想を得た新技術の売り込みを始めた。――水を黄金に変える技術だ。

 マグパイ・ポリマーズ(Magpie Polymers)が提供するのは、工業廃水に含まれている微量な希少金属を取り出す方法だ。「1リットルあたりの水から得られるのは、たった1マイクログラムだけれどね」と、創設者のスティーブ・バンジュトフェン(Steve van Zutphen)氏は語る。「五輪の競泳プールの中から角砂糖1個を取り出すみたいなものだよ」

■ペレットで金属を吸着

 オランダ人のバンジュトフェン氏は2011年、フランス人のエティエンヌ・アルモリック(Etienne Almoric)氏(30)とマグパイ・ポリマーズを立ち上げた。社屋はパリ(Paris)南東80キロのサンピエール・レ・ヌムール(Saint-Pierre-les-Nemours)にある工場の少々老朽化した建物だが、扱うのはフランスの理工系エリート養成機関エコール・ポリテクニーク(Ecole Polytechnique)が2007年に開発した最先端技術だ。

 抽出には小さなプラスチック樹脂ペレットを使う。廃水に含まれる金やプラチナ、パラジウム、ロジウムなどの希少金属が、少しずつペレットに吸着されるという。

 特許取得済みのこの樹脂1リットル分で、廃水5~10立方メートルから50~100グラムほどの希少金属が抽出できる。アルモリック氏によれば「3000~5000ユーロ(約30~50万円)相当になる」という。

■有害金属にも応用可能

 これらの希少金属は、携帯電話や触媒コンバーターなど無数の日用品に使われており、製品を廃棄する際には酸水溶液で溶解される。このとき出る排水には金属が残っており、希少かそうでないかにかかわらず水から分離させる必要がある。「水から金属を取り出す方法は19世紀からある。でも、既存の技術はやがて使えなくなったり、コストが高すぎるようになったりする」と、バンジュトフェン氏。

 マグパイ・ポリマーズの技術は、希少な金属の回収だけでなく鉛や水銀、コバルト、銅、ウランといった有害な金属の抽出にも使える。マグパイ・ポリマーズでは、希少金属の回収を専門とする「精製業」を主な取引先と見込んでいるが、鉱山グループや大規模水処理企業なども同社の技術に興味を抱くと想定している。(c)AFP