【10月24日 AFP】欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会(European Commission)は23日、金融取引に課税する「金融取引税(FTT)」を加盟国中11か国で先行導入する計画を支持すると発表した。

 FTT導入をめぐっては英国が強く反対しているが、EUには加盟27か国の3分の1に当たる9か国以上の賛成で新たな規制や制度を先行導入できる「強化された協力(enhanced cooperation)」という仕組みがあり、これを適用する。現時点でFTTに賛同しているのはフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストリア、ベルギー、ギリシャ、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、エストニアの11か国。域内の非導入国と欧州議会で承認されれば、欧州委が具体的な提案を発表することになる。

 アルギルダス・シェメタ(Algirdas Semeta)欧州委員(税制担当)は、一部加盟国での先行導入を決めた判断について「FTTには大きな利点がある。今こそ検討を進めるときだ。困難な時勢においては公正さが重要だ」と説明した。

■金融危機防止の特効薬となるか

「ロビンフッド税」の通称を持つFTTの起源は1970年代にさかのぼる。EUでは、2008年の世界金融危機を引き起こした強欲資本主義を抑制し、救済を受けた金融機関に相応の負担をさせるシステムとして、ここ数か月にわたり導入をめぐる議論が続いている。

 ジョゼ・マヌエル・バローゾ(Jose Manuel Barroso)欧州委員長は、「数十億ユーロの税収が見込める。困難に直面している加盟国が切実に必要としている歳入だ」「経済危機のコストは一般市民ではなく、金融業界が負担するよう保証する必要がある」などとFTTへの期待を語った。

 シェメタ氏が今年初めに言及したFTT案では、EU全域で株式と債券の取引に0.1%、それ以外の金融取引に0.01%課税すれば、年間570億ユーロ(約6兆円)の税収が得られるとの試算が示されている。

■EU圏内から金融機関が逃げ出す恐れも

 しかし、欧州最大の金融街シティー(City)を抱える英国は、金融取引に課税すれば投資家や金融機関が米ニューヨーク(New York)や香港(Hong Kong)、シンガポール(Singapore)など他の市場に逃げてしまうとして、FTT導入に強硬に反対している。英国によれば現在、欧州域内の金融機関の約4分の3が英国内に拠点を置いている。

 また、ユーロ圏を代表する金融センターの1つであるルクセンブルクをはじめ、キプロス、フィンランド、アイルランド、マルタ、オランダもFTTを導入しない意向を示している。(c)AFP/Claire Rosemberg