【10月23日 AFP】不運な最期を遂げた精神障害者の遺体を収容していた死体安置所をモーテルへ改装する計画を、オーストラリアの実業家が進めている。オープンすれば、宿泊客は疲れきった体を検視解剖台の上で休めることができるという。

 豪タスマニア(Tasmania)州にあるこの死体安置所は、植民地時代に建てられたウィロー・コート(Willow Court)精神科病院が閉鎖されて以降、10年以上使用されていない。

 所有者のヘイディン・ピアース(Hadyn Pearce)氏は現在、この安置所を宿泊施設に変身させようとしている。

 同氏は22日にAFPの取材に応じ、「テラゾ(人造大理石)製の解剖台や、引き出し式の冷蔵室も残っている。美しい建物ですよ」と語った。

 古美術品商のピアース氏は数年前、この歴史的跡地のうち7エーカー(約2万8300平方メートル、約8600坪)分を購入した。購入地には、1950年代に患者や地域住民の遺体を収容した死体安置所などの建物6棟が含まれ、改装作業が少しずつ進められている。

 以前の所有者はここにアイスクリームショップと保育センターを作るつもりだったとされているが、ピアースさんは死体洗浄用のステンレス製バスタブなどの設備には宿泊客を引き付けるのに十分な魅力があると考えている。

「安置室の1つにダブルベッドを置くつもりだ。使えそうな解剖台が3つ、引き出し式冷蔵庫も2つある」と話すピアースさん。4室を備える予定のこの「死体安置所モーテル」に寝泊りしたいと思う旅行者はいるだろうかと問われると、「やってみなければわかりませんね」と答えた。

 ウィロー・コート精神科病院の歴史的建物の保存に取り組む委員会のデービッド・ルウェリン(David Llewellyn)委員長は、死体安置所は個人所有なので委員会の管轄外だとしつつも、モーテルへの改装計画には賛成だと話している。「病院跡地の破壊行為や劣化を防ぐという意味では、この地区での開発は進めば進むほど良いと思っています」

 ピアース氏は2013年初頭をめどにモーテルをオープンさせたい考えだ。予約はオンラインで受け付けるという。

 同氏は既に、心霊スポットとして知られる精神科病棟1棟のモーテルへの改装を終えたほか、ビクトリア朝時代の知的障害者病棟を古美術店に、看護師宿舎を専門店へと変えており、「死体安置所モーテル」の成功にも自信を見せている。

 精神科病棟のモーテルでは「たまに扉から入るなり、おじけづいて飛び出していく変わり者もいるが、大半はうまく行っている」という。「実に美しく、歴史ある場所ですよ」(c)AFP