【8月25日 AFP】フランス・ブルゴーニュ(Burgundy)の歴史あるシャトー(ワイン醸造所)が中国人実業家に売却されることが決まり、地元ワイン生産者の間で反発が広がっている。23日には、仏極右政党・国民戦線(FN)も論争に加わり、幹部のフロリアン・フィリポ(Florian Philippot)氏が「このフランスの宝を守るため、政府がワイン生産者らを支援するべきだった」と批判した。

■地元グループ競り負ける

 12世紀に建てられ、2ヘクタールのぶどう農園を有する「シャトー・ドゥ・ジュブレ・シャンベルタン(Chateau de Gevrey-Chambertin)」は、ブルゴーニュの中でもトップレベルのワイン原産地にある。

 地元ジュブレ・シャンベルタン(Gevrey-Chambertin)のワイン生産者組合のジャンミシェル・ギヨン(Jean-Michel Guillon)組合長によれば、所有者のフランス人が今年になってシャトーを競売に掛け、マカオ(Macau)でギャンブル施設を経営する中国人実業家が800万ユーロ(約7億9000万円)という前代未聞の高値で落札した。

 組合も、シャトーをビジターセンターに改装する計画で入札していたが、競り負けた。ギヨン組合長によると、所有者の希望落札価格は700万ユーロ(約6億9000万円)だったことを明かし、「これを皮切りに、外国の投資家がブルゴーニュに押し寄せないことを願う」とAFPに語った。

■代々続く小規模農園、外国人参入にアレルギーか

 フランスが誇るもう1つのワイン名産地、ボルドー(Bordeaux)と異なり、ブルゴーニュでは比較的小規模なぶどう農園が多い。農園を所有するワイン生産者らは、幾ら暮らしが豊かになろうとも自分たちは「農家」だと考えている。農園やシャトーは通常、親から子へと引き継がれ、そのため外国人の参入が少ない点もボルドーとは対照的だ。

 シャトー売却への反発の大きさの背景にはこうした文化的差異があり、中国人に対する悪感情や外国人嫌いからくるものではないと、仏ワイン生産者の全国組織「AOC全国連盟(CNAOC)」のベルナール・ファルジュ(Bernard Farges)会長は説明する。ボルドー出身の同会長は、「彼ら(ジュブレ・シャンベルタンの人々)の反応は理解できる。ただ、ボルドーではもう珍しくもないことだ」と述べた。

 ジュブレ・シャンベルタンのジャンクロード・ロベール(Jean-Claude Robert)村長は、シャトーを落札した中国人実業家はブルゴーニュ産ワインの愛好家で、近隣のワイン生産者「ドメーヌ・ルソー(Domaine Rousseau)」にワイン生産を委託したことを公表。「私だってフランス人に落札してほしかったが、とにかく地元生産者の手でワインが造られ続けるのは良いことだ」「(シャトー・ドゥ・ジュブレ・シャンベルタンでは)再び最高品質のワインが生産されるようになるだろう。以前の所有者の下ではできなかったことだ」などと話した。(c)AFP