【8月2日 AFP】英国の不景気を吹き飛ばしてくれるはずのロンドン五輪が、かえってロンドン(London)市内の観光名所から客足を遠のかせる原因となっているようだ。開幕前に交通網の混乱や宿泊料金の高騰に対する警告が発されたことで、スポーツファン以外がロンドンを避けているためとみられる。「五輪景気」を期待していた市内の商業・観光業者らは、観戦客が混雑を避け、買い物や観光をせず競技会場とホテルを往復するだけなことに不満を募らせている。

■「ロンドンはゴーストタウンだ」

 業界団体「欧州ツアーオペレーター協会(European Tour OperatorsETOA)」によると五輪開幕後、ロンドンの観光客数は「劇的に」減少した。トム・ジェンキンス(Tom Jenkins)ETOA会長は、例年ならば夏にロンドンを訪れる海外・国内観光客は100万人を超えるが、今年は「50万人の五輪観戦客に取って代わられてしまった」と嘆く。「彼らの目的はスポーツ観戦で、しかも多くはロンドン市民だ。ロンドンで観光をしたいわけでも、買い物をしたいわけでもない」

 ジェンキンス会長は、観光客数が減ったのは五輪開幕前にロンドン交通局(Transport for London)が混雑を避けるよう勧告したためではないかと指摘。前年実績と比較してどれだけ客足に影響が出るかは「ロンドン交通局がいつまで『ロンドンに来るな」キャンペーンを展開するかによる」と述べた。

 タクシードライバー協会(Licensed Taxi Drivers Association)のスティーブ・マクナマラ(Steve McNamara)事務局長も、この見解に同意を示す。市内のタクシーの1日当たりの売り上げは2~4割減で、ロンドン中心部の通りは「まるでゴーストタウンだ」という。

 宿泊施設案内サービスを提供するジャックトラベル(JacTravel)によれば、ロンドンを訪れたい観光客の多くは8月を避け、五輪もパラリンピックも終わった9月にホテルを予約しているという。

■観光庁はあくまで強気

 こうした残念な証拠が並んでいるにもかかわらず、英国政府観光庁(VisitBritain)は強気の姿勢を崩していない。広報担当のマーク・ディトロ(Mark Di-Toro)氏は、次のように述べている。「われわれは一貫して、五輪はチャンスであると同時にチャレンジでもあると考えている。五輪開催で地元観光が打撃を受けるのはいつものことで、この現象に抵抗することこそわれわれの目指すところだ」

 英国政府は五輪開催による開催期間中の経済効果を10億ポンド(約1200億円)、その後2~3年間で130億ポンド(約1兆6000億円)と見積もっている。(c)AFP/Julien Mivielle