【6月29日 AFP】欧州連合(EU)は28日、ベルギー・ブリュッセル(Brussels)で開いた首脳会議で、債務危機で低迷する域内経済を刺激する1200億ユーロ(約11兆8300億円)規模の成長策で合意した。しかし、イタリアとスペインは、急騰する借り入れコストを抑えるための両国支援策が先決だとして署名を留保した。

 債務危機に関する協議はこれまで緊縮策や構造改革が中心だったが、EU首脳は今回初めて、経済成長を重視する政策で合意した。ヘルマン・ファンロンパイ(Herman Van Rompuy)欧州理事会常任議長(大統領)は記者会見で、成長策の核を次のように説明した。

・ 欧州投資銀行(European Investment BankEIB)の資本を100億ユーロ(約9870億円)増強し、融資能力を600億ユーロ(約5兆9200億円)に強化。融資によって経済危機にある国の経済を活性化し、危機脱却を図る。

・未使用のEU資金のうち550億ユーロ(約5兆4000億円)を、中小企業支援や若者の雇用対策に拠出する。

・エネルギー、交通、通信などインフラ投資を支援するプロジェクト債発行に45億ユーロ(約4400億円)を投入する。

 イタリアとスペインが署名を留保していることについて、ファンロンパイ議長は「長期政策と短期政策に固執している国が2つあるが、これが障害になるとは思わない。協議は続けられている」と語った。一方、あるEU外交官は現在の状況を「イタリアとスペインが成長策を人質に取っている」と評している。(c)AFP