【1月12日 AFP】自動車市場の長期的な先行きを占う場として注目される北米国際自動車ショー(North American International Auto Show)で、米自動車業界がエコカー戦略の未来をはっきりと描けずにいる。

 米ミシガン(Michigan)州デトロイト(Detroit)の会場では今年も、メーカー各社が新型のハイブリッド車(HV)やプラグイン電気自動車(EV)を続々と発表し、省エネ技術と一新されたデザインの売り込みに躍起だ。しかし、こうした盛り上がりの裏で、エコカー市場をめぐってメーカーは懐疑派と楽観派に二分されている。

■たった3%のエコカー市場、迷うメーカー

 トヨタ自動車(Toyota Motor)がHV「プリウス(Prius)」を市場に投入してから10年。だが、EVやHVが米自動車市場の売り上げに占める割合は、現在もわずか3%程度だと、米自動車研究センター(Center for Automotive Research)デービッド・コール(David Cole)所長は言う。

「エコカーが登場した初期には恐らく過剰な熱狂があった。けれど平均的な消費者にとっては、いまだに経済的に魅力があるとは言えない」

 日産自動車(Nissan Motor)のEV「リーフ(Leaf)」のこれまでの販売台数は、全米で9700台のみ。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(General MotorsGM)が2010年末に発売したプラグインHV「シボレー・ボルト(Chevrolet Volt)」も、目標を下回る8000台にとどまっている。

 米自動車業界が近年、エコカーに積極的に投資しているのは、コール氏によると政府の催促や支援ゆえだ。米政府はメーカーに対し、全モデルについて燃費を向上させるという厳しい目標を課しており、これを達成するため各社はエコカー頼みに走っているのだ。

 フォードは今週、中型セダン「フュージョン(Fusion)」2013年バージョンを発表した。ガソリン車、HV、プラグインHVの3タイプで発売予定だが、マーク・フィールズ(Mark Fields)北米フォード社長によると、各タイプの生産台数は市場の動向を見て決めるという。そして、前年売り上げたフュージョン25万台のうち、HVモデルはごく少数だ。

■HVのコスト高、EVのバッテリー不安

 1つの問題は、従来の内燃エンジンと電池の両方を搭載するHVは駆動系も2種類必要なため価格が高くなる点だと、米自動車情報サイト、エドマンズ・ドット・コム(Edmunds.com)のミシェル・クレブス(Michelle Krebs)氏は指摘する。

 さらに大きな障害として、ガソリンスタンドほど充電ステーション網が整備されていないため、バッテリー切れになったら困ると考えるドライバーたちの不安がある。

 米自動車大手クライスラー(Chrysler)と伊自動車大手フィアット(Fiat)のトップを兼任するセルジオ・マルキオーネ(Sergio Marchionne)氏も、今回デトロイトでこの2点、すなわち価格面とバッテリー充電の困難さを挙げ、エコカー市場、特にEVへの疑念を表明した。

 エコカー戦略に積極的なルノー日産(Renault-Nissan)グループのカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)会長も、EVの将来には楽観的だとしつつ供給面、特にバッテリーが普及のネックとなっていることを認め、「リーフとそのバッテリーを米国内で生産することで解決を図りたい」と述べている。

■潮流は電気ではなく、天然ガスへ?

 一方GMでは、原油価格が上昇し続けていることによって、エコカー市場の構築が促進されると見ている。マーク・ラウス(Mark Reuss)北米GM社長は10日、報道陣に「(エコカーは)長期的な取り組みだ。(環境に対して)責任を果たそうという方向に態度は変わってきていると思う」と述べた。

 しかし、クライスラーのマルキオーネCEOは、シェール(頁岩)層からの抽出に莫大な投資が行われてる天然ガスの価格が下がってきていることから、代替燃料を探す自動車業界の潮流は、電気よりも圧縮天然ガス(CNG)に向かうだろうと予測している。同社は3月、フィアットと共同開発したCNGトラックを市場投入する計画だ。(c)AFP/Veronique Dupont