【1月4日 AFP】フランス原子力安全局(Nuclear Safety AuthorityASN)は3日、福島第1原子力発電所の事故を受けて行った仏原子力産業の検査の一環で、国内の原発の安全性強化を求める提言書をフランソワ・フィヨン(Francois Fillon)首相に提出した。安全性強化には数十億ユーロ(数千億円)が必要としている。

 ASNは、仏国内の原子力施設を検査した結果、安全性は満たされており直ちに停止すべき原発はないとしながらも、「可能な限り迅速に安全性を強化する必要」があると報告。6月30日を期限に、洪水や地震が発生した場合の安全強化策を示すよう国内の原発事業者に求めた。

 具体的には即時作動するバックアップ電源の備えや非常時の冷却・運転計画、危機対応手順などで、「深刻な事故の予防もしくはその拡大を抑制」し、「事故シナリオにおいて(放射能の)大量放出を制限する」ことを要請してしている。また、原子力事故発生時に24時間以内に出動できる「緊急対応部隊」を2014年末までに配備することも求めた。

 記者会見したASNのアンドレ・クロード・ラコスト(Andre-Claude Lacoste)局長は、洪水発生時の予備電源となるディーゼル発電機には1機あたり数千万ユーロ、非常時に制御室の代わりとなる「退避壕」の建設にも多額のコストがかかるだろうと述べた。

 フランス電力公社(Electricite de FranceEDF)幹部によると、安全性強化費用は100億ユーロ(約1000億円)程度になる見通し。EDFの福島第1原発事故前の概算では、原発の発電コストはメガワット時当たり46ユーロ(約4600円)だったが、強化策により最大50ユーロ(約5000円)まで上昇しりそうだという。

 フランスは世界で最も原子力発電に依存しており、電力需要の75%を国内58基の原子炉に頼っている。(c)AFP