【11月16日 AFP】米国の名門大学ハーバード大(Harvard University)は世界金融危機の原因を作った「1パーセント」の一員だと批判する同大学の学生たちが、米マサチューセッツ(Massachusetts)州ケンブリッジ(Cambridge)のキャンパスにテントを張って抗議行動を行っている。

 強欲な企業に抗議しようと始まった反ウォール街(金融街)デモ「オキュパイ(占拠せよ)」運動に加わった学生たちは、米国で最も威信の高い同大学は、社会を経済的にもっと公正にするために貢献すべきだと主張している。

 1年生の寮や教室、チャペルや図書館があるハーバード・ヤード(Harvard Yard)では、秋が深まり木の葉が色づいた中、20数張りのテントが並んでいる。占拠7日目のこの日は静かに過ぎた。他の都市の騒々しいテント村とはかなり趣きが異なる。

 学生たちは、ウォール街で働く金融マンを数多く輩出し、世界的にも有名な同大学のビジネススクールは、米経済を破壊した銀行家たちの世代を作ってしまったと批判している。
 
 大学院生のアマンダ・ハジズ・ギンズバーグ(Amanda Haziz-Ginsberg)さん(22)は、「ハーバードは毎年毎年、行きすぎた経済活動をするトレーダーやアナリスト、フィナンシャル・アドバイザーを供給している。ハーバードは1%側の大学だけれど、99%側の大学であって欲しいと思う」と、拡大する富の不均衡を糾弾するオキュパイ運動のスローガンを使って語った。

 学生たちはテントを張ったり、行動目標を決めるミーティングを夜に開くなど、オキュパイ運動のスタイルを取り入れているが、ハーバードならではの問題意識も持っている。用務員の賃上げや、デモ参加者たちが好ましくないと考える企業への投資を止めることなどだ。

■エリートならではの使命感

 履歴書に「ハーバード大」と書けるという事実によって、抗議している学生たちには輝かしい未来がほぼ約束されているという皮肉を彼らが忘れているわけではない。そのような特権を持っていることが、社会的に有益な投資をしたり、労働者によい賃金を払ったりするよう未来のリーダーたちを教育し、根本的に新しい道を示すようハーバード大に求める原動力になったと学生たちは言う。
 
 ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)の研究者、カヴィ・バッラ(Kavi Bhalla)さん(37)は「これはハーバードの魂のための戦いだと思っています」と話す。「私は大学で要職を占める人たちに窓の外を見て、ハーバードが今進んでいる道を今後も進むことはできないことに気付いて欲しいのです」

 大学側は抗議活動をおおむね容認しているが、1638年に大学に多数の本を残し、大学名の由来にもなった聖職者、ジョン・ハーバード(John Harvard)の像の前の芝生をデモ参加者たちが占拠しようとしたことを受けて、先週、大学の身分証明書を持っていない人はハーバード・ヤードに入ることを禁じた。

 この件について大学側はコメントを拒否したが、新しく作られたウェブサイトで、ハーバード・ヤードの門を閉ざす決定は「安全上の懸念」から決断されたとするとともに、用務員の時給は2005年以降36%上がっていると説明している。

 門を閉じることへの学内の反応はさまざまだ。ある教授は大学に抗議するため、授業を外で行うことにした。しかしこの教授の授業を取っている学生(19)は、授業には出ているけれども、安全のために門を閉めたのだから大学の対応は正しいと思う、と語った。

 観光客や、ジョン・ハーバードの像の前で記念撮影をしたり、幸運を願って像の左の靴をなでたりする入学を目指す学生たちもヤードの封鎖の影響を受けている。

 しかし、14日夜に投票を行い、占拠を終える日を設定しないことを決めたデモ参加者の一部には、感謝祭やクリスマス休暇が近づき、本格的な雪が降ればテントを片付けるだろうという意見もあった。

 しかし、イマーン・ジェームズ(Iman James)さん(20)は、グローバル化が進展する世界におけるハーバードの役割についての議論は先送りされていたが、テント村の出現はこの議論に火を付けたと言う。「テントはシンボルなんです。テントを片付けた後もオキュパイ・ハーバードは終わりません」

(c)AFP/Deb Price