【8月17日 AFP】米国の著名投資家で投資持株会社バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)最高経営責任者のウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏は15日、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)への寄稿の中で、増税が投資や雇用創出に影響することはないとの見方を示し、財政再建策として富裕層増税に取り組むよう米議員らに呼びかけた。

 バフェット氏は寄稿の中で「政治家たちは『痛みを分かち合うこと』を求めてきた。だが、そのなかに私は含まれていなかった。大富豪の友人らにも彼らがどの程度の痛みを覚悟しているのか確認してみたが、彼らも対象外だということが分かった。(中略)貧困層や中流層の人たちが米国のためにアフガニスタンで戦い、大方の米国人がやりくりに苦労しているというのに、われわれ富裕層は、相変わらず多大な優遇税制の恩恵にあずかっている」と述べ、年収100万ドル(約7700万円)以上の米国民への増税と、年収1000万ドル(約7億7000万円)以上の米国民への一層の増税を提案した。

 ネブラスカ(Nebraska)州オマハ(Omaha)に住んでいることから、その洞察に満ちた発言で「オマハの賢人(Oracle of Omaha)」と呼ばれるバフェット氏は、自身の前年の所得税率は17.4%で、収入が数十億ドルに達する投資会社マネージャーのなかには税率がわずか15%だった人もいた一方、中流層は、源泉徴収でかなりの額が引かれてしまい、収入の25%程度を税金として納めていると指摘した。

 バフェット氏は1980~90年代の富裕層の税率はかなり高かったものの、1980~2000年の間に4000万人分もの雇用が新たに創出されたと指摘し、「人々が投資するのはお金を増やすためであり、増税があるかもしれないというだけで投資熱が収まることはなかった」と述べた。

 米連邦債務上限引き上げ問題は民主、共和党双方の議員を巻き込んだ泥沼の攻防を招いた。8月2日の期限直前で債務不履行は回避されたが、これによって米国人は議会の経済危機対処能力への信頼を失いつつあるとバフェット氏は指摘し、「迅速かつ現実的で実のある内容を伴った」行動が必要だと訴えた。

 バフェット氏は、「友人たちも私も、富豪に好意的な議会によって長い間、十分に甘やかされてきた。米国政府は今こそ、痛みを分かち合うことに真剣に取り組むべきだ」と述べた。(c)AFP